冷徹生徒会長が私に甘くなるまで

定期テストまで、あと三日。


「う〜〜ん……この数学の複素数と図形の問題、あと一歩のところで計算が合わない……!」

休み時間の2年B組。私は自席で頭を抱えていた。

机の上には、蒼汰くんから借りた歴史のノートと、自分の数学の教科書、そしてびっしり途中式が書かれた裏紙が広げられている。

蒼汰くんのまとめノートのおかげで、文系科目の暗記は劇的に効率が上がった。

だけど、理数系科目ばかりは地道な解き直しとパターン把握が必要だ。


「おっ、朝比奈。今日も今日とて猛勉強中か?」

頭の上から、明るく軽快な声が降ってきた。 顔を上げると、そこに立っていたのはクラスのムードメーカー、神田陸(かんだ・りく)くんだった。

少し明るいナチュラルブラウンの髪に、制服のネクタイを少しだけゆるめたフランクな着こなし。気さくで誰とでもすぐ仲良くなれる陸くんは、男子からも女子からも人気のクラスのムードメーカーだ。


「あ、陸くん! う〜ん、数学のこの問題が解けなくてうなってたの」

「どれどれ?……あー、これね! ここ、途中の符号を変え忘れてんじゃない?」

陸くんは私の机に片手をついて身を乗り出すと、シャーペンで裏紙の途中式を指さした。

「あっ……本当だ! マイナスをかけ忘れてる! すごい、陸くん、一瞬で気づいたね!」

「へへっ、オレ数学だけは得意なんだよね。逆に英語と歴史はさっぱりだけど」

陸くんはニッと爽やかに笑うと、私の机の端に置いてあったノートに目を留めた。

「つーか、朝比奈のノートすげえな! マーカーで綺麗に整理されててめっちゃ見やすい。ちょっと見てもいい?」

「うん、全然いいよ! 陸くんが数学教えてくれるなら、私の歴史のまとめノート、いくらでも見せる!」

「マジ!? 助かる〜! 朝比奈ってホント見た目華やかだけど、めっちゃ努力家だし教え上手だよな」