冷徹生徒会長が私に甘くなるまで

「……こんな時間まで、まだ残っていたのか」


不意に、頭上から静かで澄んだ声が降ってきた。

ハッとして顔を上げると、そこに立っていたのは月城蒼汰くんだった。


腕に「生徒会巡回」の腕章をつけ、資料と思われる厚い本を抱えている。夕陽を浴びた艶やかな黒髪と、切れ長の静かな瞳。 相変わらず第一ボタンまできっちり留められた制服の佇まいは、絵画のように隙がない。

「月城くん……」

私はペンを置くと、椅子の上で背筋を伸ばして彼を見上げた。


「生徒会の見回り? ごめんね、もうすぐ下校時刻だよね。すぐ片付けるから」


言葉を交わすのは、あの転校初日に生徒会室で冷たくあしらわれて以来だ。 私は別にコソコソ隠れるつもりもないし、怯むつもりもない。まっすぐに蒼汰くんの目を見つめ返した。


蒼汰くんは私の言葉にはすぐに応えず、ふと机の上に広げられたノートと参考書に視線を落とした。


「……」


その瞬間、彼の涼しげな瞳がわずかに見開かれたのを、私は見逃さなかった。