冷徹生徒会長が私に甘くなるまで

テスト一週間前。桜ヶ丘学園の放課後は、独特の張り詰めた空気に包まれていた。


「日葵ちゃん、私、そろそろ塾の時間が……。ごめんね、先に帰っても大丈夫……?」

図書室の窓際の席。結衣ちゃんが申し訳なさそうに時計を気にしながら声をかけてきた。


「全然気にしないで! 一緒に勉強できてすごく捗ったよ。結衣ちゃん、塾気をつけて行ってきてね!」

「うん! 日葵ちゃんも無理しないでね」


結衣ちゃんを見送り、私は再び目の前に広げた世界史の教科書とノートに向き直った。


夕暮れ時の図書室は、静まり返っている。 橙色の西日が大きな窓から差し込み、長い影を落としていた。


(よし……古代ローマの統治機構と年号の暗記、もう一息!)


私はピンク、ブルー、イエローの蛍光ペンを器用に持ち替えながら、ノートに重要事項を整理していく。

ただ丸暗記するんじゃない。歴史の流れをストーリー仕立てにして、登場人物の感情や事件の背景をコスメのカラーチャートみたいに整理していくのだ。


余白には、自分で描いたちいさなイラストや「※ここ注意!」という手書きのメモ、付箋がびっしりと貼られている。 ページをめくる指先はペンダコで少し赤くなっていたけれど、集中している私には痛みなんて気にならなかった。