次男は、セミや馬が好きになる前は、電車が好きだった。
自宅のそばに、電車が走っている。
角度によっては3路線見える。
ちっちゃい次男を連れて、思う存分電車を眺めさせていたものだ。
走っていく電車を何本も眺めていると、胸がきゅっと苦しくなる。
藍色と茜色の混ざった空だった。
彼女と手をつないで、分倍河原駅へ歩いて行った。
何も話さなかった。
何も話せなかった。
嫌な気まずさじゃない。
その気まずさは、駅の近くのざわめきが、気持ちを楽にしてくれた。
駅が見える。
改札が近づく。
券売機の前。
彼女と手をつないだまま。
「もうお別れだね」
彼女はふふっと笑った。
今の私なら、泣いて離したくないって言うと思う。
あの日の僕は、そんなことはできるはずがない。
でも、彼女の手を離したくない、と言う気持ちは本当だった。
僕は、「もう少しだけ」って言った。
彼女は、「もう少しだけね」って言った。
なんとなく、線路の向こうへ渡る橋の上にいた。
電車が何本も通り過ぎていく。
彼女は、
「いつになったら帰る?」
と聞いてきた。
僕は、
「電車があと10本通ったら」
と言った。
彼女は目を丸くして、笑ってくれた。
二人で電車の数を数えていた。
一本、二本。
何を話していたか覚えていない。
大したことは話していなかったはずだ。
ただただ、通り過ぎる電車の数を数えていた。
特急が通り過ぎたら、
「特急はなし!」
って駄々をこねた。
彼女は優しく笑ってくれた。
10本数えた後、手を離す。
現実に戻ったような合図だった。
彼女と改札を通る。
言葉を交わした後、それぞれ別のホームに分かれて行った。
自宅のそばに、電車が走っている。
角度によっては3路線見える。
ちっちゃい次男を連れて、思う存分電車を眺めさせていたものだ。
走っていく電車を何本も眺めていると、胸がきゅっと苦しくなる。
藍色と茜色の混ざった空だった。
彼女と手をつないで、分倍河原駅へ歩いて行った。
何も話さなかった。
何も話せなかった。
嫌な気まずさじゃない。
その気まずさは、駅の近くのざわめきが、気持ちを楽にしてくれた。
駅が見える。
改札が近づく。
券売機の前。
彼女と手をつないだまま。
「もうお別れだね」
彼女はふふっと笑った。
今の私なら、泣いて離したくないって言うと思う。
あの日の僕は、そんなことはできるはずがない。
でも、彼女の手を離したくない、と言う気持ちは本当だった。
僕は、「もう少しだけ」って言った。
彼女は、「もう少しだけね」って言った。
なんとなく、線路の向こうへ渡る橋の上にいた。
電車が何本も通り過ぎていく。
彼女は、
「いつになったら帰る?」
と聞いてきた。
僕は、
「電車があと10本通ったら」
と言った。
彼女は目を丸くして、笑ってくれた。
二人で電車の数を数えていた。
一本、二本。
何を話していたか覚えていない。
大したことは話していなかったはずだ。
ただただ、通り過ぎる電車の数を数えていた。
特急が通り過ぎたら、
「特急はなし!」
って駄々をこねた。
彼女は優しく笑ってくれた。
10本数えた後、手を離す。
現実に戻ったような合図だった。
彼女と改札を通る。
言葉を交わした後、それぞれ別のホームに分かれて行った。

