有名バンドの歌姫は無の美少女でした

side 春途


蓮華が弾き語りを始めた瞬間、俺は別世界へ飛ばされた。

いや、蓮華の演奏の中に入ったんだ。


俺がたった一人で森の中に居るような、そんな不思議な感覚。

でも、その森のなかで蓮華の音楽が響いていて。


とても、心地いい。

こんな感覚になったのは、初めてで。



――これが、蓮華の本気。

そんな事を考えれるようになったのは、蓮華が声をかけた時だったんだ。


「み、皆さん、大丈夫ですか…⁈」

そう声をかけられて演奏の中から出たものの、俺たちはまだ不思議な感覚になっていた。

す、凄すぎて声も出ねぇ…。

音楽が終わった感じがしなかった…。


これ―――プロ並みだ…。

特に歌が、プロ並みーいや、プロ以上だ。


「…ひ、久しぶりに聞いた…」


蓮司がそう言ったことで、俺はやっとこっちの世界に戻って来た。


「あはは…そんなに下手だった?」


「「「「………」」」」


…鈍感。

この時、蓮華以外は全員、そう思っていたー。