ばあやの部屋にとどまっていては、いつかはマリアに見つかってしまう。
そこで、下見も兼ねて散歩しに出かけた。
屋敷の外もゲームで歩き回ったことのある見慣れた景色だった。
今はまだ緑の葉だけど、秋になったら黄色に色づくイチョウ並木。
水鳥たちがたわむれる湖。
少し歩けば、レンガ敷きの繁華街もある。
自然を眺めてほのぼのライフを楽しんだり、街でアイテムを購入して衣装チェンジもしたな。
ゲーム画面を思い出しながら、なつかしさに浸っていたとき――。
「この時間にここを通る、金色の長い髪に、あの着飾った格好…。間違いない」
「そこのお前、待て」
そんな声が後ろから聞こえて振り返ると、二人組の男が立っていた。
「あなたたち、だれ?わたしになにか用?」
「悪いことは言わない。痛い思いをしたくなかったら、おれたちとくるんだ」
「は?なに言って――」
と、わたしが言いかけたときだった。
突如として、ひとりの男が襲いかかってきた。
「な…、なに!?」
こんなイベント、わたし…知らないんだけど!?
「おとなしく、黙ってこっちへ――」
男が手を伸ばしてくる。
しかし、わたしはそれを容易くかわすと、腕をつかんで投げ飛ばした。
「…ぶへっ!」
地面にたたきつけられた男は変な声を上げ、そのまま気絶してしまった。
「おいっ、なに寝てやがる!女子に投げ飛ばされたくらいで…!」
もうひとりの男が声をかけるけど、完全に気を失っているんだから無駄。
だって、我ながら美しい背負い投げが決まったのだから。
「さあ、次はあなたの番よ」
ドレスだということも忘れて、足を広げて構える。
そして、指先をクイクイと曲げて、不敵に微笑んだ。
――それから数分後。
「まあ、こんなもんでいいでしょう」
わたしは、パンパンと両手をはたいた。
足元には、さっきの男ふたりが伸びている。
「お…お前…、何者だ…」
気絶していると思ったけど、わずかに意識があったみたい。
「何者って?そうね…」
あごに手を当てて、少しだけ考えた。
「たぶん、悪役令嬢」
羽根飾りのついた扇子を広げ、男を見下ろす。
「悪役令嬢だと…?…くそっ。話では、こんな野蛮女子ではなかったは…ず……」
それだけ言い残して、男はまた気を失った。
ていうか、今。
わたしのこと、“野蛮女子”って言った?
もう一発、どついてもいいかしら?
「どこのだれだか知らないけど、ケンカを売る相手を間違えたようね」
男たちに言葉を吐き捨てて、その場を去った。
ところで、どうしてわたしがこんなに強いかって?
実は前世は武道一家に生まれ、幼いころから鍛えられて育ったファイター女子。
病気が見つかって入院生活を送る前までは、数々の武道の大会で優勝してきた。
だから、これくらいの護身術なんてお手の物。
ひとまず、相手をケガさせない程度に手加減できてよかった。
「この人たち、どうしよう。でもまあ、もう動けないだろうから、あとは衛兵さんに任せればいいか」
襲ってきた男たちの面倒を見るほど、お人好しでもないし。
それにしても、久々に技をキメられて大満足。
健康な体、最高ーーー!!!!
男たちをその場に放置して、スキップしながら街へと向かった。
「そうそう、このお店!かわいいドレスがたくさんあるのよね〜」
ゲーム中に頻繁に通っていたドレスショップがこの世界にもあって、思わずテンションが上がった。
中に入って、何着もドレスの試着をさせてもらったり。
まるで、着せ替え人形になったみたい!
「こちらのドレスも、とてもお似合いですよ」
「どうしましょう〜!迷っちゃう〜…!」
そんなことを言っていたとき、お店の古時計がボーンと鳴った。
見ると、時計は夕方の四時を指し示していた。
たしか、この日のこの時間といえば、マリアのピアノの習い事がある。
男子キャラたちの好感度に関わる音楽スキルが上がるから、わたしは毎回ピアノに向かわせていた。
ピアノ教室の屋敷はそれほど遠くなく、わたしがきた道を少し歩いたところにある。
そういえば、さっきの道で出会った男たち――。
『話では、こんな野蛮女子ではなかったは…ず……』
だれかを待ち伏せしているようだった。
わたしが襲われたのは、おそらくその相手と間違われたから。
『この時間にここを通る、金色の長い髪に、あの着飾った格好…。間違いない』
ふと男たちの言葉を思い出して、心臓がドキンとした。
あれくらいの時間にあの道を通る、金色の長い髪で着飾った女の子といえば――。
…わたし以外にもいるじゃない!
もしかして、あの男たちの狙いは…マリア!?
突如として、胸騒ぎがする。
衛兵がなんとかしてくれると思って、男たちを放置するんじゃなかった…!
まだ、気絶してたらいいんだけど。
マリア…、今日はピアノのレッスンを休んでくれていないかな。
でも、習い事をサボるような子じゃないし。
あの道で、マリアと男たちが出くわすようなことがあれば…大変!
はやる気持ちをなんとか抑えて、もときた道を引き返した。
早く向かいたいのに、病弱だったときの体のせいでスタミナがない。
長い間、走り続けるのは難しい。
「ハァ…ハァ…ハァ…。マリア…」
なんとか呼吸を整えながら、マリアのもとへと急ぐ。
そのとき――。
「…キャーーーー!!」
悲鳴が聞こえた。
この声は…、マリアだ!
見ると、遠くのほうで男たちに口元を押さえられているマリアの姿を見つけた。
その瞬間、わたしは鼻息を荒くしながら突進した。
「あんたたち、わたしの妹になにしてるのー!」
わたしは高く飛び上がると、ひとりの男の背中目がけて飛び蹴りをお見舞いした。
そして、華麗に舞い降りる。
「おっ…お前は、さっきの…!」
マリアを捕らえていた男の顔が引きつる。
「よくも汚い手で、わたしの大切なマリアに触れたわね。覚悟しなさい」
わたしはポキポキと指を鳴らしながら、ゆっくりと歩み寄った。
そこで、下見も兼ねて散歩しに出かけた。
屋敷の外もゲームで歩き回ったことのある見慣れた景色だった。
今はまだ緑の葉だけど、秋になったら黄色に色づくイチョウ並木。
水鳥たちがたわむれる湖。
少し歩けば、レンガ敷きの繁華街もある。
自然を眺めてほのぼのライフを楽しんだり、街でアイテムを購入して衣装チェンジもしたな。
ゲーム画面を思い出しながら、なつかしさに浸っていたとき――。
「この時間にここを通る、金色の長い髪に、あの着飾った格好…。間違いない」
「そこのお前、待て」
そんな声が後ろから聞こえて振り返ると、二人組の男が立っていた。
「あなたたち、だれ?わたしになにか用?」
「悪いことは言わない。痛い思いをしたくなかったら、おれたちとくるんだ」
「は?なに言って――」
と、わたしが言いかけたときだった。
突如として、ひとりの男が襲いかかってきた。
「な…、なに!?」
こんなイベント、わたし…知らないんだけど!?
「おとなしく、黙ってこっちへ――」
男が手を伸ばしてくる。
しかし、わたしはそれを容易くかわすと、腕をつかんで投げ飛ばした。
「…ぶへっ!」
地面にたたきつけられた男は変な声を上げ、そのまま気絶してしまった。
「おいっ、なに寝てやがる!女子に投げ飛ばされたくらいで…!」
もうひとりの男が声をかけるけど、完全に気を失っているんだから無駄。
だって、我ながら美しい背負い投げが決まったのだから。
「さあ、次はあなたの番よ」
ドレスだということも忘れて、足を広げて構える。
そして、指先をクイクイと曲げて、不敵に微笑んだ。
――それから数分後。
「まあ、こんなもんでいいでしょう」
わたしは、パンパンと両手をはたいた。
足元には、さっきの男ふたりが伸びている。
「お…お前…、何者だ…」
気絶していると思ったけど、わずかに意識があったみたい。
「何者って?そうね…」
あごに手を当てて、少しだけ考えた。
「たぶん、悪役令嬢」
羽根飾りのついた扇子を広げ、男を見下ろす。
「悪役令嬢だと…?…くそっ。話では、こんな野蛮女子ではなかったは…ず……」
それだけ言い残して、男はまた気を失った。
ていうか、今。
わたしのこと、“野蛮女子”って言った?
もう一発、どついてもいいかしら?
「どこのだれだか知らないけど、ケンカを売る相手を間違えたようね」
男たちに言葉を吐き捨てて、その場を去った。
ところで、どうしてわたしがこんなに強いかって?
実は前世は武道一家に生まれ、幼いころから鍛えられて育ったファイター女子。
病気が見つかって入院生活を送る前までは、数々の武道の大会で優勝してきた。
だから、これくらいの護身術なんてお手の物。
ひとまず、相手をケガさせない程度に手加減できてよかった。
「この人たち、どうしよう。でもまあ、もう動けないだろうから、あとは衛兵さんに任せればいいか」
襲ってきた男たちの面倒を見るほど、お人好しでもないし。
それにしても、久々に技をキメられて大満足。
健康な体、最高ーーー!!!!
男たちをその場に放置して、スキップしながら街へと向かった。
「そうそう、このお店!かわいいドレスがたくさんあるのよね〜」
ゲーム中に頻繁に通っていたドレスショップがこの世界にもあって、思わずテンションが上がった。
中に入って、何着もドレスの試着をさせてもらったり。
まるで、着せ替え人形になったみたい!
「こちらのドレスも、とてもお似合いですよ」
「どうしましょう〜!迷っちゃう〜…!」
そんなことを言っていたとき、お店の古時計がボーンと鳴った。
見ると、時計は夕方の四時を指し示していた。
たしか、この日のこの時間といえば、マリアのピアノの習い事がある。
男子キャラたちの好感度に関わる音楽スキルが上がるから、わたしは毎回ピアノに向かわせていた。
ピアノ教室の屋敷はそれほど遠くなく、わたしがきた道を少し歩いたところにある。
そういえば、さっきの道で出会った男たち――。
『話では、こんな野蛮女子ではなかったは…ず……』
だれかを待ち伏せしているようだった。
わたしが襲われたのは、おそらくその相手と間違われたから。
『この時間にここを通る、金色の長い髪に、あの着飾った格好…。間違いない』
ふと男たちの言葉を思い出して、心臓がドキンとした。
あれくらいの時間にあの道を通る、金色の長い髪で着飾った女の子といえば――。
…わたし以外にもいるじゃない!
もしかして、あの男たちの狙いは…マリア!?
突如として、胸騒ぎがする。
衛兵がなんとかしてくれると思って、男たちを放置するんじゃなかった…!
まだ、気絶してたらいいんだけど。
マリア…、今日はピアノのレッスンを休んでくれていないかな。
でも、習い事をサボるような子じゃないし。
あの道で、マリアと男たちが出くわすようなことがあれば…大変!
はやる気持ちをなんとか抑えて、もときた道を引き返した。
早く向かいたいのに、病弱だったときの体のせいでスタミナがない。
長い間、走り続けるのは難しい。
「ハァ…ハァ…ハァ…。マリア…」
なんとか呼吸を整えながら、マリアのもとへと急ぐ。
そのとき――。
「…キャーーーー!!」
悲鳴が聞こえた。
この声は…、マリアだ!
見ると、遠くのほうで男たちに口元を押さえられているマリアの姿を見つけた。
その瞬間、わたしは鼻息を荒くしながら突進した。
「あんたたち、わたしの妹になにしてるのー!」
わたしは高く飛び上がると、ひとりの男の背中目がけて飛び蹴りをお見舞いした。
そして、華麗に舞い降りる。
「おっ…お前は、さっきの…!」
マリアを捕らえていた男の顔が引きつる。
「よくも汚い手で、わたしの大切なマリアに触れたわね。覚悟しなさい」
わたしはポキポキと指を鳴らしながら、ゆっくりと歩み寄った。



