お…、おかしい。
こんな設定、わたしは知らない。
「ちょっとマリア、落ち着いて。急にどうしたの?」
「急にと言われましても、学院から戻れば、いつもお姉さまのお部屋へ遊びにいかせてもらっているではありませんか」
…そうなの!?
どういうこと…?
わたしがプレイしていたプリアカのストーリーとは違う。
なんだか、頭がこんがらがってきた…。
「ごめん、マリア。いったん、ひとりにしてもらってもいい?」
ちょっといろいろと整理したい。
「え〜…。このあとはピアノのレッスンで、お姉さまとの貴重な時間が限られていますのに」
そう言って、マリアは口をとがらせる。
その仕草、…かわいすぎる!!
ていうか、そんなにリリアといっしょにいたいの!?
かわいい顔してダダをこねられたら、「しょうがないな〜」とついお願いを聞いてしまいそうになる。
でも、…だめだめっ。
わたしは、リリア・フォン・アルベール。
妹と仲よしの悪役令嬢なんて聞いたことがない。
とはいっても、かわいいマリアにひどい言葉はかけられない。
「そうだ…!わたし、ちょっと用事を思い出しちゃった〜」
適当な理由をつけて、マリアから距離を置くために部屋を逃げ出した。
それに、せっかく落ち着いてきた心臓がまたドキドキしちゃう。
廊下を歩いていると、何人かの使用人とすれ違った。
「ごきげんよう〜」
この世界では、こう挨拶するの。
せっかくだから令嬢っぽく、声のトーンを高めに。
ところが――。
「…え゙」
すれ違う使用人たちからは、濁った声がもれた。
みんな、「リリアお嬢さまが挨拶を!?」といった顔をしている。
どうやら、前のリリアは挨拶すらもしていなかったみたい。
こんなことで驚かれるとは。
「リリアお姉さま〜!どこですの〜」
すると、後ろからマリアの声が聞こえた。
どうやら屋敷中を駆けて、わたしを探しているようだ。
だから、ついてきちゃだめだっていうのに。
追いつかれそうになって、慌てて目に入った適当な部屋に飛び込んだ。
そして、ドアに聞き耳を立てて、マリアが通り過ぎるまでじっとしていた。
「おや?リリアお嬢さまではございませんか」
ふと声がして振り返ると、窓辺にばあやがいた。
ロッキングチェアに腰をかけ、ゆっくりと前後に揺れている。
そうだ、ここはばあやの部屋だ。
「ばあや、少しだけここにいさせて。マリアに追われているの」
「追われている?いつもなら、お部屋で軽くあしらわれているではありませんか」
なるほど、普段のリリアはそうなのね。
「それにしても、どうしてマリアはこんなに構ってくるの?ゲームでは…じゃなくて、マリアはリリアのことが嫌いなはずじゃ…」
「なにをおっしゃいますか。おふたりは、昔から仲のいい姉妹ではございませんか」
…えええ!?
リリアとマリアが?
「でも…、リリアは使用人からはこわがられているっていうのに」
「お忘れですか?マリアお嬢さまのために、リリアお嬢さまはそうのような振る舞いをされていることを」
「…え?」
ばあやの話によると、前にマリアに意地悪する使用人がいたのだとか。
だけど、心やさしいマリアはその事実を打ち明けられずにひとりで悩んでいた。
そのマリアの異変に気づいたのがリリア。
マリアの代わりにリリアが使用人をお仕置きして、屋敷から追い出したらしい。
それをきっかけに、リリアは使用人に目を光らせるようになる。
以降、訳を知らない他の使用人たちは、厳しいリリアをおそれるようになったというわけだった。
リリアが使用人たちに挨拶しないというのも、この話を聞いたら納得だ。
「リリアって傲慢でわがままだと思っていたけど、実はマリアを陰で見守っていたんだ」
ゲームでは語られなかった裏設定を知って、わたしはぽつりとつぶやいた。
すると、ばあやがクスッと笑った。
「先ほどから、まるで他人事のような口調ですが、リリアお嬢さまご本人のことではございませんか」
「そ、そうね…!そんなこともあったわね。アハハハハ…」
ごまかすように、苦笑いを浮かべた。
わたしのことだけど、わたしじゃないから反応に困る。
「リリアお嬢さまはプライドが高く、昔から甘え下手ですからね。誤解されやすい性格がもったいないと、ばあやは常々思っておりました」
ばあやが見る限り、本当はリリアもマリアと仲よくしたいのだとか。
でもプライドが邪魔して、天邪鬼になってしまうらしい。
「しかしマリアお嬢さまは、リリアお嬢さまのやさしさをだれよりも知っていらっしゃいます。ですから、冷たくあしらわれようがお慕いされているのですよ」
さすがマリア!
絶対に揺るがないリリアへの想いが健気で、さらに好き!
だけど――。
周りから悪く言われようと、本当は妹思いなリリアの意外な一面も…推せるかも。
悪役令嬢に転生したとわかったときは、「なんでそっち!?」と絶望した。
でも、これからの異世界生活、リリアでいるのもそれはそれでアリかもしれない。
こんな設定、わたしは知らない。
「ちょっとマリア、落ち着いて。急にどうしたの?」
「急にと言われましても、学院から戻れば、いつもお姉さまのお部屋へ遊びにいかせてもらっているではありませんか」
…そうなの!?
どういうこと…?
わたしがプレイしていたプリアカのストーリーとは違う。
なんだか、頭がこんがらがってきた…。
「ごめん、マリア。いったん、ひとりにしてもらってもいい?」
ちょっといろいろと整理したい。
「え〜…。このあとはピアノのレッスンで、お姉さまとの貴重な時間が限られていますのに」
そう言って、マリアは口をとがらせる。
その仕草、…かわいすぎる!!
ていうか、そんなにリリアといっしょにいたいの!?
かわいい顔してダダをこねられたら、「しょうがないな〜」とついお願いを聞いてしまいそうになる。
でも、…だめだめっ。
わたしは、リリア・フォン・アルベール。
妹と仲よしの悪役令嬢なんて聞いたことがない。
とはいっても、かわいいマリアにひどい言葉はかけられない。
「そうだ…!わたし、ちょっと用事を思い出しちゃった〜」
適当な理由をつけて、マリアから距離を置くために部屋を逃げ出した。
それに、せっかく落ち着いてきた心臓がまたドキドキしちゃう。
廊下を歩いていると、何人かの使用人とすれ違った。
「ごきげんよう〜」
この世界では、こう挨拶するの。
せっかくだから令嬢っぽく、声のトーンを高めに。
ところが――。
「…え゙」
すれ違う使用人たちからは、濁った声がもれた。
みんな、「リリアお嬢さまが挨拶を!?」といった顔をしている。
どうやら、前のリリアは挨拶すらもしていなかったみたい。
こんなことで驚かれるとは。
「リリアお姉さま〜!どこですの〜」
すると、後ろからマリアの声が聞こえた。
どうやら屋敷中を駆けて、わたしを探しているようだ。
だから、ついてきちゃだめだっていうのに。
追いつかれそうになって、慌てて目に入った適当な部屋に飛び込んだ。
そして、ドアに聞き耳を立てて、マリアが通り過ぎるまでじっとしていた。
「おや?リリアお嬢さまではございませんか」
ふと声がして振り返ると、窓辺にばあやがいた。
ロッキングチェアに腰をかけ、ゆっくりと前後に揺れている。
そうだ、ここはばあやの部屋だ。
「ばあや、少しだけここにいさせて。マリアに追われているの」
「追われている?いつもなら、お部屋で軽くあしらわれているではありませんか」
なるほど、普段のリリアはそうなのね。
「それにしても、どうしてマリアはこんなに構ってくるの?ゲームでは…じゃなくて、マリアはリリアのことが嫌いなはずじゃ…」
「なにをおっしゃいますか。おふたりは、昔から仲のいい姉妹ではございませんか」
…えええ!?
リリアとマリアが?
「でも…、リリアは使用人からはこわがられているっていうのに」
「お忘れですか?マリアお嬢さまのために、リリアお嬢さまはそうのような振る舞いをされていることを」
「…え?」
ばあやの話によると、前にマリアに意地悪する使用人がいたのだとか。
だけど、心やさしいマリアはその事実を打ち明けられずにひとりで悩んでいた。
そのマリアの異変に気づいたのがリリア。
マリアの代わりにリリアが使用人をお仕置きして、屋敷から追い出したらしい。
それをきっかけに、リリアは使用人に目を光らせるようになる。
以降、訳を知らない他の使用人たちは、厳しいリリアをおそれるようになったというわけだった。
リリアが使用人たちに挨拶しないというのも、この話を聞いたら納得だ。
「リリアって傲慢でわがままだと思っていたけど、実はマリアを陰で見守っていたんだ」
ゲームでは語られなかった裏設定を知って、わたしはぽつりとつぶやいた。
すると、ばあやがクスッと笑った。
「先ほどから、まるで他人事のような口調ですが、リリアお嬢さまご本人のことではございませんか」
「そ、そうね…!そんなこともあったわね。アハハハハ…」
ごまかすように、苦笑いを浮かべた。
わたしのことだけど、わたしじゃないから反応に困る。
「リリアお嬢さまはプライドが高く、昔から甘え下手ですからね。誤解されやすい性格がもったいないと、ばあやは常々思っておりました」
ばあやが見る限り、本当はリリアもマリアと仲よくしたいのだとか。
でもプライドが邪魔して、天邪鬼になってしまうらしい。
「しかしマリアお嬢さまは、リリアお嬢さまのやさしさをだれよりも知っていらっしゃいます。ですから、冷たくあしらわれようがお慕いされているのですよ」
さすがマリア!
絶対に揺るがないリリアへの想いが健気で、さらに好き!
だけど――。
周りから悪く言われようと、本当は妹思いなリリアの意外な一面も…推せるかも。
悪役令嬢に転生したとわかったときは、「なんでそっち!?」と絶望した。
でも、これからの異世界生活、リリアでいるのもそれはそれでアリかもしれない。



