シスコン令嬢 〜妹のためなら喜んで悪役になってみせますわ!〜

「ボクを怒ってくれたの、リリアちゃんが初めてなんだ。あれから、なんだかずっと気になっちゃって」

「ぼくに魅了されない女性はリリア姫が初めてだ。それどころか、ビンタまで!あのときに恋のスイッチが入ったね」

「さっきは完敗だった。悔しくて、今はお前のことしか考えられない。こんな気持ちは初めてだ」


三人は再度わたしに手を伸ばす。


あ…ありえない。

マリアが主人公で、マリアが王子たちと結ばれるのこのプリアカの世界で――。


どうして悪役令嬢のわたしが、学院のイケメン王子、三銃士たちからダンスを誘われてるの!?


こ、これって断るべきだよね…?

いや、もちろん断るけどさ。


でも、やんわりと断るほうがいい?

それとも、悪役令嬢っぽく突っぱねるほうがいい?


…どうしよう。

予想外の展開すぎて、正解がわからない〜!


パニックで、頭の中が爆発しそうだった。

そこへ――。


「悪いな。足をケガしたそいつを踊らせるのは、俺が許可しない」


そんな声が聞こえて、後ろから足音が近づいてくる。

振り返ると、それはルイだった。


「ルイじゃない。こういう人が多く集まる場は好きじゃないと思っていたけど、きたのね」

「まあな。おてんばお嬢さまがまた無茶すると思ってな」

「おてんば…?」


わたしは首をかしげる。


「そうだ、ルイ。紹介するわね!」


わたしは隣にいるマリアの肩に手を添えた。


「この子が、わたしがいつも話している自慢の妹のマリアよ。とーーってもかわいいでしょ!?」


ダンスパーティー用のドレスを着たマリアは、いつも以上にかわいさが炸裂している。

これ見よがしに、マリアをアピールした。


しかし、マリアのかわいさがルイには通じないのか、やれやれとあきれ顔を見せた。


まあ、失礼ね。

マリアのかわいさを理解できないなんて。


「マリアにも紹介するわね。こっちはルイ。…ん〜っと、友達ではないけれど、友達ではないこともなくて…」


いまいち、ルイとの関係がわからないわ。

すると、なぜかマリアが驚いたように固まっているのに気がついた。


「どうしたの、マリア?」

「リリアお姉さま、この方とお知り合いなのですか…?」

「ええ、まあね。それがなにか?」


するとマリアは、とんでもない言葉を口にする。


「この方は、ブラックネス王国の王子。そして、リュミエール学院で三銃士と肩を並べるスペックをお持ちの“キング”さまです」

「…えっ?ブ…ブラックネス王国の“王子”?」


いや、王子も初耳でびっくりだけど。

それよりも、今――。


「“キング”…って言った?」


キングといえば、学院を牛耳る陰の支配者とも呼ばれる謎の人物じゃなかったっけ?

それで、プリアカのシークレットキャラだったはず。


七不思議か噂がひとり歩きしただけだと思っていたけど…。

その正体が――まさか。


「ルイが、キング!?」


わたしの叫び声にルイは苦笑する。

そうして、長い前髪をかき上げた。


「今ごろ気づいたのかよ」


メガネを外して、初めてルイの素顔を目の当たりにした。

それは、一瞬息をするのも忘れるほどに美しい顔をしていた。


…待って、待って。

これまでのルイとまったくイコールでつながらないんだけど。


頭を抱えていたら、突然腕を引っ張られた。

その拍子に、わたしはルイの胸板に頬がくっつく。


「残念だったな、お前たち。こいつは、ずいぶん前から俺が狙ってた」


わたしの肩を抱き寄せながら、三銃士をあおるような口ぶりのルイ。


…えっと。

これはいったい、どういう状況…?


そのとき、胸元にかすかな音がした。

目を向けると、銀ブローチがひとつつけられていた。


「なに…これ」

「俺からのだ。黙ってつけてろ」


ルイは余裕の表情でサラリと話す。


だ、だから――。


三銃士からダンスのお誘い?

キングこと、ルイから銀ブローチ?


なんでわたしの恋愛イベントが発生してるの!?


「ちょっとマリア、どうにかして…」

「リリアお姉さま、よろしいではないですか。みなさん、お姉さまをお慕いされていらっしゃるみたいで」


そう言って、マリアはフフフと小さく笑っている。


ちっ…違ーう!!

これは、そういうストーリーじゃないの…!


これから先、どんな展開になっちゃうの!?



Fin.