どうしましょう…!
初々しいふたりのやり取りを見て、わたしのほうがキュンキュンしてしまいますわ。
しかも、その日だけじゃない。
それからも、たびたびマリアとカイヤがいっしょにいる場面を見かけた。
リオは、まだ好きな人もできたことのなさそうな、世間知らずのおぼっちゃま。
それに比べてアランは、気配り上手でやさしいけれど、女性慣れしていてチャラい。
どちらも、マリアの婚約者に選ぶにはまだ不安要素が多い。
そこへ、マリアに一途な恋心を寄せるカイヤが現れる。
これはもう、カイヤしかいないじゃない!
「ふっふふ〜ん♪」
その日の学院へ向かう馬車の中、わたしは鼻歌を歌っていた。
「リリアお姉さま、今日は一段とご機嫌ですね」
「ええ。ようやくわたしの気苦労がむくわれるわけよ」
「気苦労?」
そう言って、マリアは不思議そうに首をかしげた。
気苦労をかけていたのはあなたよ、マリア。
まったく〜。
自覚がないところが、またかわいいんだから。
「そういえばお姉さま、できたのです!」
「できたって?」
「ハンカチです!」
マリアはまぶしいくらいの笑顔で、バッグから取り出したハンカチをわたしに差し出した。
ハンカチには、リリアの頭文字“R”の刺繍が入っている。
「ついに完成したのね!しかも、すごくかわいい!」
一時期、ヴィオラにぐちゃぐちゃにされて、マリアが涙を流した日もあった。
お裁縫は苦手なマリアが、それでもくじけずにこうして刺繍を完成させてくれた。
その想いに、思わず目の奥が熱くなった。
「マリア、ありがとう…!大切に使わせてもらうわね」
むしろ、大切すぎて使えないわ!
「上手になったわね、刺繍」
「ありがとうございます。繰り返すうちに、徐々にコツをつかんできました」
「そう。それなら、今度はカイヤに刺繍入りハンカチをつくってみたら?」
「カイヤさま?」
きょとんとして、目をパチクリさせるマリア。
「どうして、カイヤさまなのですか?」
「どうしてって、カイヤってなにかとマリアのこと気にかけてくれてるでしょ?」
そのお礼にマリアがハンカチをプレゼントしたら、もうイチコロでしょっ。
わたしは、ムフフと不気味に頬をゆるませた。
しかし、なぜかマリアは表情を曇らせる。
明らかに、さっきまでと様子が一変したマリア。
な、なんかわたし、余計なことでも言った…?
「実はお姉さまに、カイヤさまのことでご相談があって…」
そして、ぽつりぽつりとマリアは語った。
それを聞いたわたしは、思わず鳥肌が立ってしまった。
なにかとマリアに寄り添い、気にかけるカイヤ。
ところがマリアいわく、いつ、どこにいても、突然カイヤが現れるのだそう。
「…ちょっと待って。それって、なんだかコワくない?」
「はい…。最近、だれかに見られているような気がしていたのですが…」
「まさかそれって…」
「カイヤさまでした。物陰から、私のことを見ておられました」
ヤ…、ヤバイ!
いつでもマリアを助けてくれる、頼りがいのある王子だと思っていたけど――。
どうやら、ストーカー気質っぽい雰囲気がするわ…!
「わたしはてっきり、マリアも男らしいカイヤのことが気になっていると思ってたんだけど…」
「それは断じてありませんわ!」
まさかの、カイヤの片想いだった…!
しかも、マリアに引かれているという。
「カイヤのことが嫌なら、はっきりそう伝えればいいのに」
「ですが、カイヤさまのお心づかいを考えると、お断りするのがつらくて…」
そうだよね。
マリアは自分の気持ちよりも、相手の気持ちを優先しちゃうやさしい子だもんね。
そして、学院に到着。
馬車を降りて正門をくぐると、最後に気配を感じた。
はっとして振り返ると――。
「おはよう、マリア」
音もなくカイヤが現れた…!
「オレも今きたところなんだ」
涼しい顔を見せるカイヤ。
でも、絶対ウソ。
額や首筋に汗がにじんでいるし、長い間外でマリアがくるのを待ってたでしょ。
「荷物、持とうか?」
そう言って、カイヤがマリアに歩み寄る。
その瞬間、わたしはカイヤの前に立ちふさがった。
「カイヤさま。お気持ちはうれしいのですが、これくらいマリアひとりで持てますわ」
「お前には話していない。オレはマリアに話しているんだ」
「マリアは風邪気味で喉の調子がよろしくないので、代わりにわたくしがお伝えさせていただきましたわ」
カイヤのストーカー気質の話を聞いたときは、どこかでまさか…という気持ちもあった。
でも、これで確信した。
こんなにかっこいい顔をして、頼もしくて、一途。
それだけだったら、すごくよかったのに〜…。
「それではごきげんよう、カイヤさま」
そうして、マリアを連れて教室へと逃げ込んだ。
どうやら、まだまだ気苦労がかかりそうね。
やっぱりわたしがマリアを守らなくちゃ!
それから、数日後。
SPのように、わたしは徹底してマリアに張りついていた。
そのおかげで、強引にカイヤがやってくることはなかった。
そして、今日はリュミエール学院の一大イベント――闘技大会の日。
運動会みたいなもので、男子生徒がスポーツ種目を競い合う。
その夜には、学院のダンスホールでダンスパーティーも催されるのだ。
体験版では、闘技大会というものがあるという話だけで、実装はされていなかった。
だから、どんなものかわたしもすごく楽しみ!
女子生徒は観戦だけだけど、スポーツ得意な男子生徒たちに歓声が止むことはない。
マリアもいっしょにワクワクしながら見ていた。
リオは、アーチェリーで優勝。
アランは、馬術で優勝。
さすが三銃士は、スポーツ値が高いみたいね。
「キングは出場されていないのかしら?」
「あたしも探してるんだけど、いらっしゃらないみたいね」
「キングの勇姿も見たかったわ〜」
ふと、女子生徒たちのそんな会話が聞こえた。
そういえば、まだキングを見たことがなかったわ。
学院の一大イベントをボイコットなんて、さすがやりたい放題ね。
「マリア、わたし飲み物取ってくるわね」
競技と競技の合間、わたしは飲み物を買いに席を外した。
すると、端のほうでつまらなそうな顔をして壁に寄りかかる黒髪を見つけた。
ルイだ。
「ルイじゃない。こんなところでなにしてるの」
「べつに。観戦しにきた」
「観戦って、あなたはどの競技に参加してるの?」
「俺は不参加。こういう暑苦しいの、苦手なんだよな」
…いたわ。
ここにもボイコットしている生徒が。
「それよりも、聞いたか?」
「聞いたって、なにを?」
「お前の大事な妹さ」
「…マリア?」
マリアがなんだっていうのよ。
「次、闘技会で一番盛り上がる種目『剣技』で、カイヤが出場予定なんだ」
「へ〜、それがどうしたの?」
「そこでカイヤが優勝したら、あいつ、お前の妹に金ブローチを渡して、婚約を迫るらしいぞ」
唐突に言われて、思わずぽかんとしてしまった。
でも徐々に、頭の中が整理されて――。
「はあ!?…婚約っ!?」
初々しいふたりのやり取りを見て、わたしのほうがキュンキュンしてしまいますわ。
しかも、その日だけじゃない。
それからも、たびたびマリアとカイヤがいっしょにいる場面を見かけた。
リオは、まだ好きな人もできたことのなさそうな、世間知らずのおぼっちゃま。
それに比べてアランは、気配り上手でやさしいけれど、女性慣れしていてチャラい。
どちらも、マリアの婚約者に選ぶにはまだ不安要素が多い。
そこへ、マリアに一途な恋心を寄せるカイヤが現れる。
これはもう、カイヤしかいないじゃない!
「ふっふふ〜ん♪」
その日の学院へ向かう馬車の中、わたしは鼻歌を歌っていた。
「リリアお姉さま、今日は一段とご機嫌ですね」
「ええ。ようやくわたしの気苦労がむくわれるわけよ」
「気苦労?」
そう言って、マリアは不思議そうに首をかしげた。
気苦労をかけていたのはあなたよ、マリア。
まったく〜。
自覚がないところが、またかわいいんだから。
「そういえばお姉さま、できたのです!」
「できたって?」
「ハンカチです!」
マリアはまぶしいくらいの笑顔で、バッグから取り出したハンカチをわたしに差し出した。
ハンカチには、リリアの頭文字“R”の刺繍が入っている。
「ついに完成したのね!しかも、すごくかわいい!」
一時期、ヴィオラにぐちゃぐちゃにされて、マリアが涙を流した日もあった。
お裁縫は苦手なマリアが、それでもくじけずにこうして刺繍を完成させてくれた。
その想いに、思わず目の奥が熱くなった。
「マリア、ありがとう…!大切に使わせてもらうわね」
むしろ、大切すぎて使えないわ!
「上手になったわね、刺繍」
「ありがとうございます。繰り返すうちに、徐々にコツをつかんできました」
「そう。それなら、今度はカイヤに刺繍入りハンカチをつくってみたら?」
「カイヤさま?」
きょとんとして、目をパチクリさせるマリア。
「どうして、カイヤさまなのですか?」
「どうしてって、カイヤってなにかとマリアのこと気にかけてくれてるでしょ?」
そのお礼にマリアがハンカチをプレゼントしたら、もうイチコロでしょっ。
わたしは、ムフフと不気味に頬をゆるませた。
しかし、なぜかマリアは表情を曇らせる。
明らかに、さっきまでと様子が一変したマリア。
な、なんかわたし、余計なことでも言った…?
「実はお姉さまに、カイヤさまのことでご相談があって…」
そして、ぽつりぽつりとマリアは語った。
それを聞いたわたしは、思わず鳥肌が立ってしまった。
なにかとマリアに寄り添い、気にかけるカイヤ。
ところがマリアいわく、いつ、どこにいても、突然カイヤが現れるのだそう。
「…ちょっと待って。それって、なんだかコワくない?」
「はい…。最近、だれかに見られているような気がしていたのですが…」
「まさかそれって…」
「カイヤさまでした。物陰から、私のことを見ておられました」
ヤ…、ヤバイ!
いつでもマリアを助けてくれる、頼りがいのある王子だと思っていたけど――。
どうやら、ストーカー気質っぽい雰囲気がするわ…!
「わたしはてっきり、マリアも男らしいカイヤのことが気になっていると思ってたんだけど…」
「それは断じてありませんわ!」
まさかの、カイヤの片想いだった…!
しかも、マリアに引かれているという。
「カイヤのことが嫌なら、はっきりそう伝えればいいのに」
「ですが、カイヤさまのお心づかいを考えると、お断りするのがつらくて…」
そうだよね。
マリアは自分の気持ちよりも、相手の気持ちを優先しちゃうやさしい子だもんね。
そして、学院に到着。
馬車を降りて正門をくぐると、最後に気配を感じた。
はっとして振り返ると――。
「おはよう、マリア」
音もなくカイヤが現れた…!
「オレも今きたところなんだ」
涼しい顔を見せるカイヤ。
でも、絶対ウソ。
額や首筋に汗がにじんでいるし、長い間外でマリアがくるのを待ってたでしょ。
「荷物、持とうか?」
そう言って、カイヤがマリアに歩み寄る。
その瞬間、わたしはカイヤの前に立ちふさがった。
「カイヤさま。お気持ちはうれしいのですが、これくらいマリアひとりで持てますわ」
「お前には話していない。オレはマリアに話しているんだ」
「マリアは風邪気味で喉の調子がよろしくないので、代わりにわたくしがお伝えさせていただきましたわ」
カイヤのストーカー気質の話を聞いたときは、どこかでまさか…という気持ちもあった。
でも、これで確信した。
こんなにかっこいい顔をして、頼もしくて、一途。
それだけだったら、すごくよかったのに〜…。
「それではごきげんよう、カイヤさま」
そうして、マリアを連れて教室へと逃げ込んだ。
どうやら、まだまだ気苦労がかかりそうね。
やっぱりわたしがマリアを守らなくちゃ!
それから、数日後。
SPのように、わたしは徹底してマリアに張りついていた。
そのおかげで、強引にカイヤがやってくることはなかった。
そして、今日はリュミエール学院の一大イベント――闘技大会の日。
運動会みたいなもので、男子生徒がスポーツ種目を競い合う。
その夜には、学院のダンスホールでダンスパーティーも催されるのだ。
体験版では、闘技大会というものがあるという話だけで、実装はされていなかった。
だから、どんなものかわたしもすごく楽しみ!
女子生徒は観戦だけだけど、スポーツ得意な男子生徒たちに歓声が止むことはない。
マリアもいっしょにワクワクしながら見ていた。
リオは、アーチェリーで優勝。
アランは、馬術で優勝。
さすが三銃士は、スポーツ値が高いみたいね。
「キングは出場されていないのかしら?」
「あたしも探してるんだけど、いらっしゃらないみたいね」
「キングの勇姿も見たかったわ〜」
ふと、女子生徒たちのそんな会話が聞こえた。
そういえば、まだキングを見たことがなかったわ。
学院の一大イベントをボイコットなんて、さすがやりたい放題ね。
「マリア、わたし飲み物取ってくるわね」
競技と競技の合間、わたしは飲み物を買いに席を外した。
すると、端のほうでつまらなそうな顔をして壁に寄りかかる黒髪を見つけた。
ルイだ。
「ルイじゃない。こんなところでなにしてるの」
「べつに。観戦しにきた」
「観戦って、あなたはどの競技に参加してるの?」
「俺は不参加。こういう暑苦しいの、苦手なんだよな」
…いたわ。
ここにもボイコットしている生徒が。
「それよりも、聞いたか?」
「聞いたって、なにを?」
「お前の大事な妹さ」
「…マリア?」
マリアがなんだっていうのよ。
「次、闘技会で一番盛り上がる種目『剣技』で、カイヤが出場予定なんだ」
「へ〜、それがどうしたの?」
「そこでカイヤが優勝したら、あいつ、お前の妹に金ブローチを渡して、婚約を迫るらしいぞ」
唐突に言われて、思わずぽかんとしてしまった。
でも徐々に、頭の中が整理されて――。
「はあ!?…婚約っ!?」



