わたしの怒号が食堂内に響き渡る。
「あんた、わかってる!?その料理、あんたが食べるために作ってくれた人がいて、そのために食材を育ててくれた人がいて、食材になった命もあるのよ?」
前世で入院していたときのわたしは、食べられるものが限られていた。
隣のベッドの子は、食物アレルギーがひどく、食べたいものがあっても食べられないといって泣いていた。
だから、いろんな料理を食べられることは幸せなこと。
それに、世界には貧しくて食べ物すら手に入らない人たちがいるっていうのに――。
「…“食べ物なんていくらでもある”?ふざけんじゃないわよ。命を無駄にするな!」
豹変して怒鳴り散らすわたしを前にして、リオは驚いて言葉も出ないといった表情をしている。
「好き嫌いはだれにでもあるから仕方ないわ。だったら、食べられるものだけ頼みなさい。食材がもったいないでしょ!」
「…でも、コース料理は勝手に運ばれてくるから、ボクのせいじゃない…」
「そんなの知らないわよ。自分でコース料理を選んだのなら、責任持って食べなさいよ。ひと口も食べないなんて、料理に失礼でしょうが」
わたしにキッとにらまれ、リオはビクッとして姿勢を正す。
「ご…ごめんなさ――」
「わたしじゃない。料理に謝りなさい!」
「…ごめんなさいっ!」
まったく…。
わたしは重いため息をつく。
食堂はバイキングなんだから、自分が好きなものだけ取ればいいものの。
なんでよりにもよって、コース料理なんか頼むかなぁ。
「その料理、食べないならわたしがもらってもいいかしら?」
「ど、どうぞ…」
リオから料理の乗ったお皿を奪い取る。
ランチタイムが終わるまでに食べ終わらなくちゃいけないから、あ〜忙しい忙しい。
黙々と食べていると、ふと視線を感じた。
目を向けると、リオがじっとわたしのことを見ている。
すると、リオのチャームポイントである丸い目が徐々にうるんでいった。
唇をきゅっと噛み、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「うっ…、うわぁぁぁあん…!パパとママにも怒られたことないのに〜…!」
涙をこらえきれなくなったリオは、わたしを残して食堂から出ていってしまった。
あ〜あ、泣いちゃった。
…って、しまった!
リオというキャラを探ろうと思ったら、偏食が気になって…つい。
すると、一部始終を見ていた生徒たちがわたしのところへやってくる。
「ちょっと、あなた!リオさまを泣かせたわね!?」
「リオさまは繊細なお方なの!あなたみたいな野蛮な人間に怒鳴られたら、傷つくに決まってるでしょ!」
ですよねぇ〜…。
完全にやってしまいました、はい。
「セカンドレディだからって、調子に乗るんじゃないわよ!」
「リオさまに謝りなさい!」
べつに調子に乗ってはないし、謝るっていったって、わたしは当たり前のことを言っただけ。
どうしようかとリオが座っていた席を見ると、腕時計が置かれているのが見えた。
手に取ると、ベルトのところに【RIO】と刻印されていた。
どうやら、リオの忘れ物のようだ。
届けなくちゃ!
そう思ったけれど、今わたしが行ったところでこわがられて逃げられるだけだろう。
でも、大切なものだろうから早く返してあげないと…。
「そうだ!いいこと考えちゃった」
わたしは悪い顔をして微笑んだ。
ランチタイム後、教室に戻っていたマリアと合流した。
そして、リオの腕時計をマリアに託した。
妹のマリアからなら受け取ってくれるだろうし、大事なものを届けてくれたマリアの好感度もアップするはず。
「ごめんね、マリア。こんな用事を任せちゃって」
「構いません。リリアお姉さまがお食事を代わってくださったのですから、私もお姉さまのためにできることをしたいです」
さすがマリア!
なんていい子なの…!
放課後、マリアはリオのもとへ向かってくれた。
リオも腕時計を探していたようで、マリアにとても感謝している。
そのふたりのやり取りを、わたしは物陰からこっそりとのぞいていた。
年上のアランたちよりも、年下のリオのほうがマリアも話しやすそうに見える。
ただ、リオもあんなことで泣いてしまうとは。
もう少し強いハートを持てるようになるまでは、マリアは任せられないわね。
それから、一週間後。
ここ最近のマイブームは、天気がいい日に授業終わりにマリアと読書をすること。
マリアが教えてくれたお気に入りの場所で。
そこはソファが設けられた藤棚で、学院の中庭にある。
葉っぱやツルがお生いしげって、日陰をつくってくれる。
風も吹いたらとっても気持ちいい。
今日の放課後も、読書をしにやってきた。
マリアは先生に呼び出されているから、戻ってくるまで中庭で過ごす。
いつものお気に入りの藤棚にやってくると、すでに男女の生徒が利用していた。
「あら。先客がいるのなら仕方ないわね」
それじゃあ今日は、別の場所に――。
「あ…、悪役令嬢…!」
「…すみません!すみません!すぐにどきますから、見逃してください…!」
カップルは飛び起きると、慌ててどこかへ行ってしまった。
「わたし、なにかした?」
ふたりの後ろ姿を首をかしげながら見つめた。
「マリア、まだかしら。やっぱり、わたしもついていったほうがよかったかしら」
腕を組んで、ソファに深く腰かけた。
そのとき、いつも静かな中庭が妙に騒がしくなった。
「見つけた」
ふと声が聞こえて顔を上げると、風になびく銀髪の長身が見えた。
「会いたかったよ、愛しのハニー」
そう言って、さわやかなスマイルを見せて現れたのは、アランだった。
「あんた、わかってる!?その料理、あんたが食べるために作ってくれた人がいて、そのために食材を育ててくれた人がいて、食材になった命もあるのよ?」
前世で入院していたときのわたしは、食べられるものが限られていた。
隣のベッドの子は、食物アレルギーがひどく、食べたいものがあっても食べられないといって泣いていた。
だから、いろんな料理を食べられることは幸せなこと。
それに、世界には貧しくて食べ物すら手に入らない人たちがいるっていうのに――。
「…“食べ物なんていくらでもある”?ふざけんじゃないわよ。命を無駄にするな!」
豹変して怒鳴り散らすわたしを前にして、リオは驚いて言葉も出ないといった表情をしている。
「好き嫌いはだれにでもあるから仕方ないわ。だったら、食べられるものだけ頼みなさい。食材がもったいないでしょ!」
「…でも、コース料理は勝手に運ばれてくるから、ボクのせいじゃない…」
「そんなの知らないわよ。自分でコース料理を選んだのなら、責任持って食べなさいよ。ひと口も食べないなんて、料理に失礼でしょうが」
わたしにキッとにらまれ、リオはビクッとして姿勢を正す。
「ご…ごめんなさ――」
「わたしじゃない。料理に謝りなさい!」
「…ごめんなさいっ!」
まったく…。
わたしは重いため息をつく。
食堂はバイキングなんだから、自分が好きなものだけ取ればいいものの。
なんでよりにもよって、コース料理なんか頼むかなぁ。
「その料理、食べないならわたしがもらってもいいかしら?」
「ど、どうぞ…」
リオから料理の乗ったお皿を奪い取る。
ランチタイムが終わるまでに食べ終わらなくちゃいけないから、あ〜忙しい忙しい。
黙々と食べていると、ふと視線を感じた。
目を向けると、リオがじっとわたしのことを見ている。
すると、リオのチャームポイントである丸い目が徐々にうるんでいった。
唇をきゅっと噛み、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「うっ…、うわぁぁぁあん…!パパとママにも怒られたことないのに〜…!」
涙をこらえきれなくなったリオは、わたしを残して食堂から出ていってしまった。
あ〜あ、泣いちゃった。
…って、しまった!
リオというキャラを探ろうと思ったら、偏食が気になって…つい。
すると、一部始終を見ていた生徒たちがわたしのところへやってくる。
「ちょっと、あなた!リオさまを泣かせたわね!?」
「リオさまは繊細なお方なの!あなたみたいな野蛮な人間に怒鳴られたら、傷つくに決まってるでしょ!」
ですよねぇ〜…。
完全にやってしまいました、はい。
「セカンドレディだからって、調子に乗るんじゃないわよ!」
「リオさまに謝りなさい!」
べつに調子に乗ってはないし、謝るっていったって、わたしは当たり前のことを言っただけ。
どうしようかとリオが座っていた席を見ると、腕時計が置かれているのが見えた。
手に取ると、ベルトのところに【RIO】と刻印されていた。
どうやら、リオの忘れ物のようだ。
届けなくちゃ!
そう思ったけれど、今わたしが行ったところでこわがられて逃げられるだけだろう。
でも、大切なものだろうから早く返してあげないと…。
「そうだ!いいこと考えちゃった」
わたしは悪い顔をして微笑んだ。
ランチタイム後、教室に戻っていたマリアと合流した。
そして、リオの腕時計をマリアに託した。
妹のマリアからなら受け取ってくれるだろうし、大事なものを届けてくれたマリアの好感度もアップするはず。
「ごめんね、マリア。こんな用事を任せちゃって」
「構いません。リリアお姉さまがお食事を代わってくださったのですから、私もお姉さまのためにできることをしたいです」
さすがマリア!
なんていい子なの…!
放課後、マリアはリオのもとへ向かってくれた。
リオも腕時計を探していたようで、マリアにとても感謝している。
そのふたりのやり取りを、わたしは物陰からこっそりとのぞいていた。
年上のアランたちよりも、年下のリオのほうがマリアも話しやすそうに見える。
ただ、リオもあんなことで泣いてしまうとは。
もう少し強いハートを持てるようになるまでは、マリアは任せられないわね。
それから、一週間後。
ここ最近のマイブームは、天気がいい日に授業終わりにマリアと読書をすること。
マリアが教えてくれたお気に入りの場所で。
そこはソファが設けられた藤棚で、学院の中庭にある。
葉っぱやツルがお生いしげって、日陰をつくってくれる。
風も吹いたらとっても気持ちいい。
今日の放課後も、読書をしにやってきた。
マリアは先生に呼び出されているから、戻ってくるまで中庭で過ごす。
いつものお気に入りの藤棚にやってくると、すでに男女の生徒が利用していた。
「あら。先客がいるのなら仕方ないわね」
それじゃあ今日は、別の場所に――。
「あ…、悪役令嬢…!」
「…すみません!すみません!すぐにどきますから、見逃してください…!」
カップルは飛び起きると、慌ててどこかへ行ってしまった。
「わたし、なにかした?」
ふたりの後ろ姿を首をかしげながら見つめた。
「マリア、まだかしら。やっぱり、わたしもついていったほうがよかったかしら」
腕を組んで、ソファに深く腰かけた。
そのとき、いつも静かな中庭が妙に騒がしくなった。
「見つけた」
ふと声が聞こえて顔を上げると、風になびく銀髪の長身が見えた。
「会いたかったよ、愛しのハニー」
そう言って、さわやかなスマイルを見せて現れたのは、アランだった。



