「…今の聞いたか?」
「妹を差し置いて、出しゃばってきたぞ!」
「さすが、悪評どおりの悪役令嬢だ」
周囲の生徒は不満そうに表情をゆがめ、口々に話す。
なんとでも言いなさい。
あなた方に、マリアのつらさはわからなくてよ。
「あっ、リリアちゃんだ〜!」
「もちろん。セカンドレディのキミなら大歓迎さ」
「さっさと座るんだな」
三人から許可もいただいたことだし、あとの面倒はわたしが見よう。
「マリア、そこ代わってくれる?」
マリアの肩を軽くたたき、イスから立ち上がらせる。
「慣れない異性相手に、ひとりでよくがんばったわね」
「リリアお姉さまっ…」
「マリアは静かな場所で休んでいなさい」
「はい…!」
この緊張感からようやく解放されて、マリアは思わず涙をこぼした。
「見ろ。妹のマリアが泣いてるぞ…!」
「悪役令嬢の姉、なんて言ったんだ?」
「きっと、『あんたじゃ役立たずよ』とでも言って、脅したんじゃない?」
マリアが涙を拭いながら人混みの中へと消えていく。
三銃士といきなり食事だなんて、マリアには荷が重すぎたみたいね。
この場から、自然に逃がせてよかった。
「それでは失礼いたします」
わたしは微笑むと、さっきまでマリアが座っていたイスに腰かけた。
せっかくの三銃士との食事。
この機会に、三人を見定めなくちゃ。
「おい、お前。オレたちが渡した銀ブローチはどうした?」
さっそくカイヤが、なにもついていないわたしの胸元に気づいた。
「ほんとだ。つけてないの?」
「ひとつでももらえたら、女の子はみんな喜んですぐにつけるのにね?」
アランとリオも顔を見合わせる。
「銀ブローチをいただけたことが光栄で、壊れたら大変ですので自分の部屋で大切に保管していますの」
本当は、もらったその日にテーブルにポイッてしたけどね。
プリアカのゲーム内では、レアアイテムだった銀ブローチ。
それを手にすることができる女の子は、そうそういない。
だけど、三銃士の話によると、ひとまず気になった女の子に手渡すようだ。
ただ、金ブローチは別。
彼らも金ブローチを渡す相手は、将来の妃候補と思っているらしい。
「それにしても、御三方は仲がよろしいみたいですが」
「みんな、父親は各国の国王だから、息子のぼくたちは幼いころから国王会議に連れていかれて、顔を合わす仲なんだ」
「つまり、幼なじみですか」
「そういうこと」
アランはやさしく微笑む。
三年生のアランは中性的でさわやかで、典型的な王子様キャラ。
それはプレイしていたころの印象と変わらない。
ただ――。
「リリア姫、手がきれいだね。ちょっと見せて」
そう言って、勝手に手を取ってきた。
細かいところによく気づくけど、実物のアランはなんだかチャラい気が…。
わたしも“姫呼び”になってるし。
それに比べて、同じ三年生のカイヤは男らしい。
三銃士の中では寡黙で、好感度が上がれば徐々に会話が増えていくギャップのあるキャラだ。
「そこのお前、オレのグラスが空だぞ。なぜ気づかない?」
ボーイに対して威圧的な態度。
わたしにもそうだったけど、“お前呼び”するは人は個人的には好きじゃない。
プリアカでは、そんな俺様のところがまたよかったけど、現実のカイヤは俺様すぎる。
「おい、アラン。そろそろ時間だぞ」
「あっ、本当だ。悪いけど、先にぼくたちは失礼するね」
まだランチタイムの途中だというのに、カイヤとアランが席を立った。
三年生は課外学習で、このあと出かけるのだとか。
「じゃあ、リオ。あとは頼んだよ」
「オレたちの分までもてなしてやれ」
「うん。アランくん、カイヤくん、いってらっしゃ〜い!」
そうして、テーブルにはわたしとリオのふたりだけに。
リオって、プリアカプレイヤーの中でも、甘え上手で仕草がかわいい年下キャラで人気だった。
実際のリオもそのまんま。
「リリアちゃんは、普段はなにして過ごしてるの?」
話題を振って、わたしを楽しませようとしてくれている。
もしかしたら年上のアランやカイヤよりも、意外と年下のリオのほうがマリアに合うのかも。
そんなことを考えながら、わたしはリオの顔をまじまじと眺めていた。
ふと視線を下ろすと、リオがまったくコース料理を食べていないのに気がついた。
「食欲、あまりないのですか?」
ほぼ手をつけていないから下げられず、前菜からメインまでがリオの前に並んでいる。
「ううん、そんなことはないよ。ただ、嫌いなものばかりだから食べないだけ」
驚いたことに、リオは肉、魚、野菜全般が食べられないのだという。
しかも、ただの食わず嫌い。
「…じゃあ、普段はなにを食べられているのですか?」
「フルーツとかスイーツかな。ぼく、甘いものが好きなんだよね〜」
ちょうどデザートのアイスが運ばれてきた。
「お父さまとお母さま、お食事についてはなんと?」
「食べ物なんていくらでもあるんだから、好きなものだけ食べたらいいよ〜って。パパもママもやさしいから」
おいしそうにアイスを頬張るリオ。
「お腹空いた〜。もっと持ってきて」
アイスに関しては、おかわりまでしている。
だけど、その他の料理はまるで虫でも触るかのように、渋い顔をしてフォークの先でつつく。
それを見た瞬間、わたしの体が勝手に動いた。
「ちょっと待ちなさい」
気づいたら、わたしはリオの手からフォークを引ったくっていた。
「食べないなら、最初から頼まない。食べ物で遊ばない!…そして、嫌そうに料理をつつくなぁぁぁっ!!」
「妹を差し置いて、出しゃばってきたぞ!」
「さすが、悪評どおりの悪役令嬢だ」
周囲の生徒は不満そうに表情をゆがめ、口々に話す。
なんとでも言いなさい。
あなた方に、マリアのつらさはわからなくてよ。
「あっ、リリアちゃんだ〜!」
「もちろん。セカンドレディのキミなら大歓迎さ」
「さっさと座るんだな」
三人から許可もいただいたことだし、あとの面倒はわたしが見よう。
「マリア、そこ代わってくれる?」
マリアの肩を軽くたたき、イスから立ち上がらせる。
「慣れない異性相手に、ひとりでよくがんばったわね」
「リリアお姉さまっ…」
「マリアは静かな場所で休んでいなさい」
「はい…!」
この緊張感からようやく解放されて、マリアは思わず涙をこぼした。
「見ろ。妹のマリアが泣いてるぞ…!」
「悪役令嬢の姉、なんて言ったんだ?」
「きっと、『あんたじゃ役立たずよ』とでも言って、脅したんじゃない?」
マリアが涙を拭いながら人混みの中へと消えていく。
三銃士といきなり食事だなんて、マリアには荷が重すぎたみたいね。
この場から、自然に逃がせてよかった。
「それでは失礼いたします」
わたしは微笑むと、さっきまでマリアが座っていたイスに腰かけた。
せっかくの三銃士との食事。
この機会に、三人を見定めなくちゃ。
「おい、お前。オレたちが渡した銀ブローチはどうした?」
さっそくカイヤが、なにもついていないわたしの胸元に気づいた。
「ほんとだ。つけてないの?」
「ひとつでももらえたら、女の子はみんな喜んですぐにつけるのにね?」
アランとリオも顔を見合わせる。
「銀ブローチをいただけたことが光栄で、壊れたら大変ですので自分の部屋で大切に保管していますの」
本当は、もらったその日にテーブルにポイッてしたけどね。
プリアカのゲーム内では、レアアイテムだった銀ブローチ。
それを手にすることができる女の子は、そうそういない。
だけど、三銃士の話によると、ひとまず気になった女の子に手渡すようだ。
ただ、金ブローチは別。
彼らも金ブローチを渡す相手は、将来の妃候補と思っているらしい。
「それにしても、御三方は仲がよろしいみたいですが」
「みんな、父親は各国の国王だから、息子のぼくたちは幼いころから国王会議に連れていかれて、顔を合わす仲なんだ」
「つまり、幼なじみですか」
「そういうこと」
アランはやさしく微笑む。
三年生のアランは中性的でさわやかで、典型的な王子様キャラ。
それはプレイしていたころの印象と変わらない。
ただ――。
「リリア姫、手がきれいだね。ちょっと見せて」
そう言って、勝手に手を取ってきた。
細かいところによく気づくけど、実物のアランはなんだかチャラい気が…。
わたしも“姫呼び”になってるし。
それに比べて、同じ三年生のカイヤは男らしい。
三銃士の中では寡黙で、好感度が上がれば徐々に会話が増えていくギャップのあるキャラだ。
「そこのお前、オレのグラスが空だぞ。なぜ気づかない?」
ボーイに対して威圧的な態度。
わたしにもそうだったけど、“お前呼び”するは人は個人的には好きじゃない。
プリアカでは、そんな俺様のところがまたよかったけど、現実のカイヤは俺様すぎる。
「おい、アラン。そろそろ時間だぞ」
「あっ、本当だ。悪いけど、先にぼくたちは失礼するね」
まだランチタイムの途中だというのに、カイヤとアランが席を立った。
三年生は課外学習で、このあと出かけるのだとか。
「じゃあ、リオ。あとは頼んだよ」
「オレたちの分までもてなしてやれ」
「うん。アランくん、カイヤくん、いってらっしゃ〜い!」
そうして、テーブルにはわたしとリオのふたりだけに。
リオって、プリアカプレイヤーの中でも、甘え上手で仕草がかわいい年下キャラで人気だった。
実際のリオもそのまんま。
「リリアちゃんは、普段はなにして過ごしてるの?」
話題を振って、わたしを楽しませようとしてくれている。
もしかしたら年上のアランやカイヤよりも、意外と年下のリオのほうがマリアに合うのかも。
そんなことを考えながら、わたしはリオの顔をまじまじと眺めていた。
ふと視線を下ろすと、リオがまったくコース料理を食べていないのに気がついた。
「食欲、あまりないのですか?」
ほぼ手をつけていないから下げられず、前菜からメインまでがリオの前に並んでいる。
「ううん、そんなことはないよ。ただ、嫌いなものばかりだから食べないだけ」
驚いたことに、リオは肉、魚、野菜全般が食べられないのだという。
しかも、ただの食わず嫌い。
「…じゃあ、普段はなにを食べられているのですか?」
「フルーツとかスイーツかな。ぼく、甘いものが好きなんだよね〜」
ちょうどデザートのアイスが運ばれてきた。
「お父さまとお母さま、お食事についてはなんと?」
「食べ物なんていくらでもあるんだから、好きなものだけ食べたらいいよ〜って。パパもママもやさしいから」
おいしそうにアイスを頬張るリオ。
「お腹空いた〜。もっと持ってきて」
アイスに関しては、おかわりまでしている。
だけど、その他の料理はまるで虫でも触るかのように、渋い顔をしてフォークの先でつつく。
それを見た瞬間、わたしの体が勝手に動いた。
「ちょっと待ちなさい」
気づいたら、わたしはリオの手からフォークを引ったくっていた。
「食べないなら、最初から頼まない。食べ物で遊ばない!…そして、嫌そうに料理をつつくなぁぁぁっ!!」



