シスコン令嬢 〜妹のためなら喜んで悪役になってみせますわ!〜

結局、あの三人はそのあとの授業を欠席した。

体調不良がどうとかで。


「…大丈夫でしょう。お風邪でも引かれてしまったのでしょうか…」

「そんなの、マリアが気にしなくてもいいの。ただの仮病よ」


ひどいことをしてきた三人だというのに、本気で体調を心配するマリア。

心が美しすぎて泣けてくる。


ランチタイムは、マリアが食堂へと案内してくれた。

その途中で、廊下の端から甲高い声が聞こえてきた。


「三銃士よー!」


それを聞くなり、一目散に女子生徒たちが同じ方向へ走っていく。


「な、なに…?」


人の波に飲まれそうになって、慌ててマリアと廊下の隅に避難する。


「何事?」

「三銃士ですわ、お姉さま。一目見ようと、皆様こうして走っていかれるのです。リュミエール学院では恒例の光景ですよ」


ああ、なるほど。

マリアの恋愛対象の三人のイケメン王子たちの呼び名が『三銃士』ね。


それぞれが自国の次期国王で、超絶ハイスペックの超絶美形。

プリアカでの三人のビジュも最高だった。


女子生徒はもちろんのこと、男子生徒までも魅了してしまうオーラを放っているとか。


どうしてあの三人が、ヴィオラに銀ブローチを渡しているのかが謎。

だけど、マリアのこれからのため、絶対に出会わなくてはならない人物たちだ。


「マリアは行かないの?」

「はい。雲の上の方たちですから、私は遠くから眺めているだけで十分です」


ここにきて初めて知ったけど、そもそもマリアは異性に興味がなかった。


それじゃあ、恋愛イベントが発生しないじゃない…!


「なに言ってるの!わたしたちも行くわよ!」

「えっ?」


わたしはマリアの手を握ると、他の生徒たちを押しのけて、われ先にと向かった。


バルコニーには三銃士見たさに、たくさんの人が集まっていた。


「あれが、三銃士…」


もみくちゃにされながらも人混みからなんとか顔を出すと、下の広場でくつろぐ三銃士の姿が見えた。

わたしは、目の前の三人とプリアカ体験版の記憶を頭の中ですり合わせる。


「アランさま、今日もお美しいわ〜!」


ベンチで読書をする、銀髪の長髪をひとつに束ねたイケメンはアラン。

シルバニ王国の王族で、三年生。

女性のように、きれいな顔立ちをしている。


「見て!カイヤさまの筋肉!」


そして、その横で木によじ登り懸垂をしている、青色の短髪イケメンはカイヤ。

ブルージー王国の王族で、同じく三年生。

まくり上げたシャツの裾からは、引き締まった腕が見える。


「リオさま、かわいすぎる〜!」


さらに、その木の根元ですやすやと眠っている、ピンク髪のゆるめパーマのイケメンはリオ。

ピンキー王国の王族で、一年生。


まるでひなたぼっこを楽しむ猫のようにころんと丸くなって、愛らしさがある。


当たり前だけど、彼らも本物だ〜!


まだこの感覚に慣れない。


体験版では、彼らと少し話しただけのところで終わってしまった。

これからマリアには、三銃士とのあんな恋やこんな恋がたくさん待っているんだ。


「マリア、三銃士をしっかりと目に焼きつけておきなさい」

「え?どうしてですか?」


マリアはきょとんと首をかしげる。


「どうしてって、彼らはあなたの婚約者候補たちなんだから」

「こっ…、婚約者…!?」


マリアにしてはめずらしく、大きな声を発した。

そして、ぽっと頬が赤くなって、両手で顔を隠した。


「お姉さまったら、急になにをっ…。三銃士の方たちとは、お言葉を交わすだけで恐れ多いというのに」


もちろんマリアはなにも知らないだろうけど、プリアカをプレイしていたわたしは知っている。

このあとの恋愛イベントのことを考えると、にやけが止まらなかった。


「今はそう思っても仕方がないわ。でもあとで、わたしの言葉の意味がわかるはずよ」


そう言って、マリアにウインクしてみせた。


マリア、楽しみにしていなさい。

わたしがきっと、彼らの中のだれかと結ばせてあげるから!