軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜




「ありがとうございました! お気をつけて!」
 結菓子の包みを大切に抱えた親子が、晴れやかに帰っていく。
 小さな背中が角の向こうへ消えるまで、凪と将臣は店先で並んで見送った。
 将臣が、ぽつりと呟く。
「……本当に、人を結ぶ菓子だったな」
 凪は、隣に立つ将臣を見上げた。
「ええ」
 そして、溢れんばかりの笑顔で答える。
「兄様の願いは……叶いました」
 凪の髪に挿した結いの意匠が、きらりと光る。
 将臣の顔にも、穏やかな笑みが浮かぶ。

 自然と重ね合わされる、二人の手。
 今度はもう、どちらもその手を離そうとはしなかった。

 澄み渡る秋空の下、山吹色の暖簾が二人の頭上で優しく揺れている。

 その下で──ふたりは固く、手を結んだ。


     (完)