天才の、まだ知らない恋愛鬼ごっこ

 本当、大変だった。
 
 まず、引退宣言。
 そこで社員と国の重鎮、王族に泣きつかれた。
 
 次は本格的な引き継ぎ。
 ここでもわたしを引退させまいと、資料を隠したり、決闘を持ちかけられたりした。
 
 最後に領民への挨拶回り。
 大丈夫かと思うほど、みんな落ち込んでいた。ほんとに大丈夫なのか?と思ってしまうほどに。
 お祝いで虫を撒かれた。
 
 この国では虫は神の遣いと言われているが、気持ち悪すぎる。
いや、笑顔で虫をひっつけてくるって……
 
 取りあえず、これで国から出ることはできる。
 
 そういえば、跡継ぎのみんな、顔青ざめさせて、私に謝罪してきたな……?
 
 まあいい。義務の十年以上は働いた。
 
 これで心残りはない。
 
 ……今までありがと、私の、大切であり、最も残酷なもの。