翌日
放課後の図書室。
俺は昨日と同じ席で、本を読んでいた。
いつもと変わらない日常。
静かで良い。
その静寂を壊すように、図書室の扉がガラリと開いた。
顔を上げる。
昨日の女が、入口に立っていた。
薫と目が合うと、綾香の表情がぱっと明るくなる。
「あ、やっぱりいた」
「……」
薫は一度だけ綾香に目を向けて、本に戻った。
「ありゃ、無視?相変わらずだねぇ」
「……」
「今日もいるかなって思って来たんだけど」
「…何しに来たの」
「君に会いに来ただけだよ?」
綾香は当たり前のことのように薫の向かいへ座った。
発言といい、行動といい。
…何なんだ、この人。
「また会えたね、黒木くん。」
「……」
「嬉しくない?」
「…逆に聞くけど。嬉しそうに見える?」
「あはは、まったく見えない」
…じゃあ何で来たんだ。
何言われてもこの人はとらえどころのない笑みを浮かべている。
「ねえ、黒木くん」
…しつこい。
「今しつこいなって思ってるでしょ。バレバレだよ?」
「…べつに、隠してないけど」
「わあ、辛辣〜」
「うるさい。というか、読書中に話しかけないで。集中できない」
こんなふうに冷たく言っても、この人は逆に嬉しそうに笑うだけだ。
「え〜。じゃあ、話しかけなければいいの?」
「………」
「何も言わないってことはいいってことだよね?」
そう言うや否や、綾香は机に頬杖をついて薫をじーっと眺め始めた。
まるで野良猫を観察するように。
…この人、本当に何なんだ。
