「もう、独りにさせない」―誰にも頼れなかった過去ごと、年下御曹司に溺愛されています


---









家事代行の仕事を始めてから、
もうすぐ四年が経とうとしていた。









娘は保育園の年中になり、
少しずつ手がかからなくなってきた。












仕事にも慣れ、担当のお客様からも「丁寧で助かる」と声をかけてもらえることが増えた。




















忙しい毎日おかげで、心のどこかにしまい込んだ記憶は、少しずつ、思い出す頻度を減らしていった。















思えば、この四年間、
運が良かった。












 



娘がまだ小さい頃、契約更新のタイミングで急に「上役の判断で、頑張っている社員への特別支給です」とボーナスが上乗せされたことがあったり。











 






シングルマザーという理由だけで何件も入居を断られたときも、諦めかけていた矢先に一件だけ、信じられないほど好条件の部屋から折り返しの電話がきた。「空きが出たので、ぜひ」と担当者は笑っていた。


















―あまりに不憫だからって神様が手を貸してくれたんだろうな…










***











「優花さん、ちょっといい?」






 





ある日、事務所に呼ばれた。デスクにいた社長が、珍しく改まった顔をしていた。










「新しいお客様なんだけど……ほら、よく依頼してくれるあの上品な藤堂様の知り合いみたいで。真面目で仕事が丁寧だと聞いた、って。二人体制じゃなくて、優花さん一人で担当してほしいって要望なのよ、この広さなんだけど……いけそう?」











 


差し出された資料に目を落とした瞬間、間取り図の広さに息を呑んだ。

「わ……(広い……)」














藤堂様というのは、以前何度か担当したことのある品の良い年配のお客様だ。




  



あの人からの紹介なら、と変な安心感もあって、二つ返事で引き受けた。














渡された依頼書には、見慣れない苗字が書かれていた。








――九条様。







  






どこかの企業の役員だろうか、というくらいにしか思わなかった。

***