「もう、独りにさせない」―誰にも頼れなかった過去ごと、年下御曹司に溺愛されています










「おめでとうございます。妊娠十二週に入っていますね」











医師の声が、やけに他人事のように耳を素通りしていく。待合室で聞こえた誰かの弾む足音とは対照的に、私の指先は冷えたままだった。








――おめでとう、か。





素直に喜べる状況じゃないことくらい、自分が一番よく分かっている。この子の父親に、もう会うつもりはない。頼るという選択肢は、最初からなかった。













エコー写真を受け取り会計を済ませて外に出ると、夏の日差しが容赦なく肌を刺した。スマホを取り出しても、真っ先に連絡したい相手なんて浮かばない。実家に電話をかける気にもなれなかった。














――そうだ。昔から、ずっとそうだった。













困ったときに頼れる場所なんて、
生まれてこのかた一度もなかったのだから。














***











物心ついたときから、家の中に"私の居場所"はなかった。










兄には期待を、妹には甘さを注ぐ両親は、
私にだけ違う顔を向けた。「お姉ちゃんなんだから」
「もう自分でできるでしょう」――熱を出しても、
泣いても、返ってくる言葉はいつも同じだった。













甘えることを、私は早々に諦めた。
高校を出たらすぐに家を出ると決めていたのも、
自立が夢だったからじゃない。














あの家に自分の場所がないと、
誰よりも自分が一番分かっていたからだ。














苦しかった、息が上手く出来なくて。












――そんな私の前に、彼が現れた。


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