「俺に恋しちゃうっていうのはわかるんですけどね、嫌われるよりはましだと思ったんですよ」
愛斗がそう言うと、婦長の三木康子は柔らかく頷いた。
「うん、本当はね。男性患者は男性看護師、女性患者は女性看護師が担当するのが一番いいんだけど、ここはどうしても人手が足りなくてね。幸村さんには申し訳ないけど、担当を外れてもらうことにするわ」
「ありがとうございます」
「だから、辞めたりしないでね」
「はい、頑張ります」
康子たちと話を終えてナースステーションに戻ったところ、ナースコールが鳴った。
病室へ向かうと、大戸屋二郎のベッドのそばで、付き添いの家族が「キャラメル、どうぞ」と声をかけていた。二郎が受け取ろうと手を伸ばしたので、愛斗は慌てて止めた。
「すみません、キャラメルは食べられないんです。胃ろうの手術をしているので、誤嚥の危険がありますから」
「孫がおじいちゃんのために買ってきてくれたのよ。少しくらいいいじゃない」
「本当にごめんなさい。誤嚥性肺炎にでもなったら、大変なことになります」
すると家族は顔をしかめ、きつい言葉を投げつけた。
「あなたって、なんて残酷なの!」
その言葉が胸に突き刺さり、愛斗はうつむいた。
誰もいない屋上へ上がると、片思いをしている赤根涼子がいた。思い切って「さっき、患者さんの家族に『残酷だ』って言われちゃいました」と打ち明けると、涼子は優しく肩を叩いてくれた。
「言われちゃったか。でも愛斗くんは悪くないんだから、気にする必要全然ないよ」
「ありがとうございます」
「いいよ。また何か嫌なこと言われたら、いつでも話しに来てね」
「はい、ありがとうございます」
話していると涼子のスマホのタイマーが鳴った。
「あ、もうこんな時間。息子の三者面談に行かないと」
「そうなんですね」
「うん、シングルマザーだからねえ。これから大学に行くから、お金もすごくかかるんだよ」
「大変ですね」
「うん、じゃあまたね。お疲れ様」
「お疲れ様です」
涼子が去った後、愛斗もナースステーションに戻り、その日の業務を終えて帰宅した。
一夜明け、次の日も朝から仕事に向かった。ナース服に着替え、昼まで忙しく動き回っていたが、午後になってもナースコールが何度も何度も鳴り響いた。そのたびに涼子が駆けつけていた。
その日もまた、二郎の病室へ行くと、彼はひどく不機嫌そうにしていた。話しかけても返事がなく、いきなり近くの机を勢いよく動かした。その角が涼子に当たり、バランスを崩してその場にしりもちをついてしまった。
すると二郎は素早くナースコールを押した。愛斗が駆けつけると、「看護師さんが転んだ」と告げる。愛斗は涼子を支えてナースステーションへ連れて行き、足の痛む場所に湿布を貼った。そのとき、涼子は苦しそうに咳き込んだ。
「大戸屋さん、私がいれば落ち着いてくれるのに…今日はどうしてあんなに不機嫌だったのかしら」
「そういえば、何回ナースコールがあったんですか?」
手帳に書かれた数字を見ると、「38回」と記されていた。
「38回…」
「うん」
涼子の咳はなかなか止まらなかった。愛斗が背中を優しくさすり続けていると、康子が「今日はもう早退して休みなさい」と声をかけてくれた。涼子は頷き、その日は早めに帰宅することになった
愛斗は家まで送り駐車場に車を止ると涼子の息子の
貴之がいて涼子の所にいき荷物をもちなかにはいった。
愛斗は貴之が作ったおでんを食べた。
愛斗がそう言うと、婦長の三木康子は柔らかく頷いた。
「うん、本当はね。男性患者は男性看護師、女性患者は女性看護師が担当するのが一番いいんだけど、ここはどうしても人手が足りなくてね。幸村さんには申し訳ないけど、担当を外れてもらうことにするわ」
「ありがとうございます」
「だから、辞めたりしないでね」
「はい、頑張ります」
康子たちと話を終えてナースステーションに戻ったところ、ナースコールが鳴った。
病室へ向かうと、大戸屋二郎のベッドのそばで、付き添いの家族が「キャラメル、どうぞ」と声をかけていた。二郎が受け取ろうと手を伸ばしたので、愛斗は慌てて止めた。
「すみません、キャラメルは食べられないんです。胃ろうの手術をしているので、誤嚥の危険がありますから」
「孫がおじいちゃんのために買ってきてくれたのよ。少しくらいいいじゃない」
「本当にごめんなさい。誤嚥性肺炎にでもなったら、大変なことになります」
すると家族は顔をしかめ、きつい言葉を投げつけた。
「あなたって、なんて残酷なの!」
その言葉が胸に突き刺さり、愛斗はうつむいた。
誰もいない屋上へ上がると、片思いをしている赤根涼子がいた。思い切って「さっき、患者さんの家族に『残酷だ』って言われちゃいました」と打ち明けると、涼子は優しく肩を叩いてくれた。
「言われちゃったか。でも愛斗くんは悪くないんだから、気にする必要全然ないよ」
「ありがとうございます」
「いいよ。また何か嫌なこと言われたら、いつでも話しに来てね」
「はい、ありがとうございます」
話していると涼子のスマホのタイマーが鳴った。
「あ、もうこんな時間。息子の三者面談に行かないと」
「そうなんですね」
「うん、シングルマザーだからねえ。これから大学に行くから、お金もすごくかかるんだよ」
「大変ですね」
「うん、じゃあまたね。お疲れ様」
「お疲れ様です」
涼子が去った後、愛斗もナースステーションに戻り、その日の業務を終えて帰宅した。
一夜明け、次の日も朝から仕事に向かった。ナース服に着替え、昼まで忙しく動き回っていたが、午後になってもナースコールが何度も何度も鳴り響いた。そのたびに涼子が駆けつけていた。
その日もまた、二郎の病室へ行くと、彼はひどく不機嫌そうにしていた。話しかけても返事がなく、いきなり近くの机を勢いよく動かした。その角が涼子に当たり、バランスを崩してその場にしりもちをついてしまった。
すると二郎は素早くナースコールを押した。愛斗が駆けつけると、「看護師さんが転んだ」と告げる。愛斗は涼子を支えてナースステーションへ連れて行き、足の痛む場所に湿布を貼った。そのとき、涼子は苦しそうに咳き込んだ。
「大戸屋さん、私がいれば落ち着いてくれるのに…今日はどうしてあんなに不機嫌だったのかしら」
「そういえば、何回ナースコールがあったんですか?」
手帳に書かれた数字を見ると、「38回」と記されていた。
「38回…」
「うん」
涼子の咳はなかなか止まらなかった。愛斗が背中を優しくさすり続けていると、康子が「今日はもう早退して休みなさい」と声をかけてくれた。涼子は頷き、その日は早めに帰宅することになった
愛斗は家まで送り駐車場に車を止ると涼子の息子の
貴之がいて涼子の所にいき荷物をもちなかにはいった。
愛斗は貴之が作ったおでんを食べた。

