この恋に終わりがあるなら

 桜の花びらが舞う通学路。
 
 並んで笑い合う生徒や、スマホを桜にかざして写真を撮る通行人。

 ……私以外は、全員。春を心待ちにしていたようだ。

 じゃあ、私はどうかと言えば、皆んなとは真逆の暗い表情を地面に落としている。

 ローファーが足を締め付ける感覚も、指定バックの紐が両肩に圧をかける感覚が嫌。

 胸元の赤いネクタイも、チェックのスカートも、黒のハイソックスだって嫌。

 でも…1番嫌いなのは……自分自身。

「おはよー!クラス分けの掲示見た?」
「見たー!一緒だったね!」
「担任だれ?秋山?」
「春休みに家族で旅行してさー。」
「俺毎日バイト」

 鉛入りの足をなんとか持ち上げて校門に一歩踏み入れた途端……生徒達の雑談が四方から耳に直撃して、体が勝手に硬直した。

(……息ぐるしい)

 緊張で狭まる喉は、空気を上手く取り入れてくれない。

 その息苦しさから解放される術を知らないし、それでも《《普通》》でいようとすると、益々息の仕方がわからなくなる。

(…息、荒くないかな…)

 小さな不安は波紋を描くように全身に広がっていく。身体中にじわじわと灰色の靄が広がる様な感覚がして、不調に感じ始めたと同時、鼓動が耳のすぐ奥に響きはじめる。

(だめ……教室に行くなんて、やっぱり無理)
   
校庭から、あと一歩……あと一歩で正門をくぐれるのに、その一歩を踏み出すのが……堪らなく怖い。

「麦は大丈夫!」

 そう言って、私の背中を押して送り出したお母さんを《《また》》裏切る自分が1番嫌。