人形少女と二人ぼっち

一ノ瀬が帰ったあと、もう、いのりの手は震えていなかった

いのりは、やっぱり人形のようで、表情は読み取ることはできない

だけど、繋いだ手の、お互いの体温だけが、私たちを支えていた

私たちの周りには、二人だけの時間が流れていた。それは、決して人間が共有できるものではない

しばらくして、廊下にパンプスの音が廊下に響いた

花帆だった。花帆は私たちの前に来ると、やっぱり"息が止まりそうなくらい"見惚れて立ち尽くしていた。まるで、初めて花帆に会った時のように

「いのり、ましろ、二人とも…」

いのりは人形だから、花帆に反応することはできない

「あの、花帆さん、目の前のテーブルにご案内しますよ」 

「ありがとう、みゆちゃん」

花帆は、それに応じて、私たちの目の前で、紅茶とクッキーを楽しんだ

どんなことを思っていたのだろうか。私には分からない

花帆は、席を立ったあとも、バックヤードで、紅茶を淹れたり、お菓子を用意して、喫茶を手伝っていたようだった