『付き合ってない、たぶん』上

お互いに「相手は拓海が好きで、今日告白するんだ」と思い込んでいるから、一言かけるタイミングすら掴めない。

そんな重苦しい空気の二人の席に、「おっはよー!」と拓海がいつも通りの軽いノリでやってきた。

その後ろには、全てを知っている陸と凛も、ニヤニヤとした笑みを隠しもせずに立っている。

「おいお前ら、文化祭の朝から何その葬式みたいな空気! ダブルエースがそんなんでどうすんだよ」

拓海が俺の肩にガシッと腕を回してきた。

「っ、拓海、離れろ」

蓮の低い、地を這うような声が響く。

その切れ長の瞳には、いつも以上の鋭い敵意が宿っていた。

(……今日、春から告白されるかもしれないクセに、これ以上ベタベタ触んじゃねぇよ……!)

「おー怖い怖い。あ、そうだ春、ちょっと後で中庭のステージ裏に来いよ。陸がなんか手伝ってほしいことあるんだってさ」

「えっ、あ、うん。分かった……」

俺は心臓が跳ね上がるのを必死に隠して返事をした。

ステージ裏なんて、陸と計画した「あの告白」の準備に決まっている。