『付き合ってない、たぶん』上

文化祭当日の朝。

中等部からのエスカレーター組で賑わう教室は、お祭り騒ぎの熱気に包まれていた。

だけど、俺たちの間だけは、まるで氷が張ったみたいに冷え切っていた。

(……ダメだ、蓮の顔が見られない。今日あのステージで告白したら、明日からはもう、こうやって隣にいることもできなくなるかもしれないんだよな……)

俺は、机の上に突っ伏したまま、チラリと隣の席の蓮を見た。

蓮はいつも通りぶっきらぼうな顔でスマホをいじっている。

だけど、その画面をタップする指先が、どこか落ち着きがない。

(……チッ、春のやつ、朝から一言も喋んねぇな。やっぱり今日、あのステージで拓海に告白するつもりなのか? だから俺に対してそんなに気まずそうな顔してんのかよ……)

蓮は平然を装いながら、内心では嫉妬と焦りで頭がおかしくなりそうだった。