『付き合ってない、たぶん』上

春が教室へ戻っていくのを見送りながら、陸はすぐにスマホを取り出し、包囲網のグループLINEにメッセージを飛ばした。

『ターゲットA(春)、確保。当日ラストの枠にブチ込むわ』その数分後。

部室棟の裏の自動販売機前では、蓮が凛を相手に、恐ろしいほどの威圧感を放ちながら缶コーヒーを握りしめていた。

「……凛。あのステージの告白コーナー、まだ枠は空いてるか」

「ふーん。蓮が出るの? 珍しいね」

凛はいつもの涼しい顔で、面白そうに瞳を輝かせる。

こちらも中等部からの腐れ縁、蓮が春のことで限界を迎えているのは百も承知だ。

「……あいつが、拓海のことばっか見てるのがもう限界だ。男同士だとか、幼馴染が終わるとか、そんなのどうでもいい。振られて気まずくなって、二度と口を利いてもらえなくなったとしても、俺の気持ちを全部ぶつけて、あいつの頭の中を俺だけでいっぱいにしてやる」

蓮の切れ長の瞳には、悲痛なまでの覚悟と、暗い独占欲がギラギラと渦巻いていた。

春が拓海に片想いしている(と信じ込んでいる)からこそ、玉砕覚悟で奪い取るつもりなのだ。

「いいよ、蓮。君の男気に免じて、一番盛り上がる『大トリ』の枠を蓮のために空けてあげる。……春には、絶対に内緒にしておくからね?」

凛は心の中で「これでラストステージは蓮と春の直接対決だね」と大歓笑しながら、完璧な手配を進めるのだった。