一方その頃、蓮は蓮で――。
(……クソ、春のやつ、今日も目が合うたびに気まずそうに逸らしやがって。そんなに俺の隣が嫌かよ。そんなに拓海がいいか……?)
蓮は平然とした顔でソックスを引き上げながら、内心ではドス黒い嫉妬の炎をパチパチと燃え上がらせていた。
そんな、お互いに「相手の好きな奴は拓海だ」と大勘違いして限界までこじらせている二人の前に、
「よぉ、お疲れー」と、全ての元凶である拓海が、陸と凛を引き連れてニヤニヤしながら現れた。
「おい、お前ら。ちょっとこれ見ろよ」
拓海がポケットからスマートフォンを取り出し、俺と蓮の目の前に突き出す。
「な、何だよ、これ……っ!?」
画面を見た瞬間、俺の頭から一気に湯気が噴き出しそうになった。
そこに映っていたのは、帰りのバスのシートの上で、信じられないほどぴったりと密着して眠る、俺と蓮の姿だった。
俺は蓮の胸元に完全に顔を埋めるようにして、その細い腕を蓮の背中に回している。
そして蓮もまた、大きな腕で俺の腰をがっしりと抱きすくめていた。
(う、嘘……っ!? なにこれ、1ミリの隙間もないじゃん……! しかもこれ、いつの間に撮られたの……!?)
「っ、拓海、お前、それ……っ!!!」
隣で画面を覗き込んだ蓮も、一瞬で耳の付け根まで真っ赤に染まり、椅子がひっくり返るほどの勢いで立ち上がった。
いつも通りの低い、だけど完全に余裕をなくした鋭い声で拓海を睨みつける。
「おいおい、そんなに怒るなって。陸と凛も『これは国宝級の証拠写真だ』って大絶賛だぞ?」
「そうそう。付き合ってない奴らの距離感じゃねぇだろ、マジで」
陸がくすくすと笑い、凛も暗闇の中で悪戯っぽく瞳を輝かせている。
「……消せ。今すぐ消せ、拓海」
蓮が拳をぎゅっと握りしめ、地を這うような声で言った。
(……ヤバい、これ以上春に見せたら、男同士でこんな風に抱きつかれて気持ち悪いって思われる……! これ以上、春に嫌われたくねぇ……!)
焦りと恐怖で心臓がバクバクと暴れる蓮は、拓海のスマホを力ずくで奪い取ろうと手を伸ばす。
だけど、拓海はそれをひらりと交わして、ニヤリと邪悪に笑った。
「やーだね。これ消してほしかったらさ、お前らのその『お友達ごっこ』、いつまで続けるつもりか教えろよ。それか、この写真を部活のグループLINEに誤爆しちゃおうかなー?」
「っ、お前……!!」
蓮の額に青筋が浮かぶ。
その時、俺は真っ赤になった顔をユニフォームの袖で隠しながら、消え入りそうな声で呟いた。
「……拓海。それ、本当に消して……、お願い……。」
俺のその言葉は、蓮の胸に別の意味で突き刺さった。
(……春が、あんなに嫌がってる。やっぱり、俺に抱きつかれて寝てたのが、そんなにショックだったんだな……。拓海にそんな風に見られるのが、耐えられないくらい嫌なんだ……)
春の悲しそうな(と勘違いした)表情を見た瞬間、蓮の頭の中で、何かが完全にキレた。
「おい、拓海」
蓮が一歩踏み出し、拓海の胸ぐらを掴む一歩手前の、圧倒的な威圧感で言い放つ。
「その写真、俺に寄こせ」
「え?」
拓海が目を丸くする。
「消さなくていいから、その写真、今すぐ俺のスマホに転送しろ。……その代わり、お前のスマホからは完全に消去しろ。他の誰にも見せるな。陸も凛も、二度と口にするな」
蓮の切れ長の瞳には、ただの照れ隠しではない、本気の、冷徹な『独占欲』がギラギラと宿っていた。
(春のこんな無防備な姿、他の男に一秒だって見せてたまるか。拓海、お前が春の好きな奴だとしても……この写真だけは、絶対に俺がもらう)
「お、おう……分かったよ。そこまでマジになんなって」
蓮の本気すぎるオーラに、流石の仕掛け人の拓海も一瞬気圧され、
苦笑いしながら「ほらよ」とAirDropで蓮のスマホに写真を転送した。
そして、目の前で自分の端末から完全に削除してみせる。
蓮のポケットの中で、マナーモードのスマホが短く震えた。
それを受け取ったのを確認すると、蓮はふいっと俺から目を逸らし、ぶっきらぼうに部室のドアへと歩き出した。
「……先に行くぞ、春」
「あ、うん……」
俺は、自分の心臓がうるさいくらいに跳ね上がっているのを感じていた。
(蓮、あの写真……消させずに、自分でもらうんだ……。なんで? 拓海に自分の寝顔を見られるのが恥ずかしかったから? それとも、俺との写真を……残しておきたかった、なんて……そんなわけ、ないよね……)
(……クソ、春のやつ、今日も目が合うたびに気まずそうに逸らしやがって。そんなに俺の隣が嫌かよ。そんなに拓海がいいか……?)
蓮は平然とした顔でソックスを引き上げながら、内心ではドス黒い嫉妬の炎をパチパチと燃え上がらせていた。
そんな、お互いに「相手の好きな奴は拓海だ」と大勘違いして限界までこじらせている二人の前に、
「よぉ、お疲れー」と、全ての元凶である拓海が、陸と凛を引き連れてニヤニヤしながら現れた。
「おい、お前ら。ちょっとこれ見ろよ」
拓海がポケットからスマートフォンを取り出し、俺と蓮の目の前に突き出す。
「な、何だよ、これ……っ!?」
画面を見た瞬間、俺の頭から一気に湯気が噴き出しそうになった。
そこに映っていたのは、帰りのバスのシートの上で、信じられないほどぴったりと密着して眠る、俺と蓮の姿だった。
俺は蓮の胸元に完全に顔を埋めるようにして、その細い腕を蓮の背中に回している。
そして蓮もまた、大きな腕で俺の腰をがっしりと抱きすくめていた。
(う、嘘……っ!? なにこれ、1ミリの隙間もないじゃん……! しかもこれ、いつの間に撮られたの……!?)
「っ、拓海、お前、それ……っ!!!」
隣で画面を覗き込んだ蓮も、一瞬で耳の付け根まで真っ赤に染まり、椅子がひっくり返るほどの勢いで立ち上がった。
いつも通りの低い、だけど完全に余裕をなくした鋭い声で拓海を睨みつける。
「おいおい、そんなに怒るなって。陸と凛も『これは国宝級の証拠写真だ』って大絶賛だぞ?」
「そうそう。付き合ってない奴らの距離感じゃねぇだろ、マジで」
陸がくすくすと笑い、凛も暗闇の中で悪戯っぽく瞳を輝かせている。
「……消せ。今すぐ消せ、拓海」
蓮が拳をぎゅっと握りしめ、地を這うような声で言った。
(……ヤバい、これ以上春に見せたら、男同士でこんな風に抱きつかれて気持ち悪いって思われる……! これ以上、春に嫌われたくねぇ……!)
焦りと恐怖で心臓がバクバクと暴れる蓮は、拓海のスマホを力ずくで奪い取ろうと手を伸ばす。
だけど、拓海はそれをひらりと交わして、ニヤリと邪悪に笑った。
「やーだね。これ消してほしかったらさ、お前らのその『お友達ごっこ』、いつまで続けるつもりか教えろよ。それか、この写真を部活のグループLINEに誤爆しちゃおうかなー?」
「っ、お前……!!」
蓮の額に青筋が浮かぶ。
その時、俺は真っ赤になった顔をユニフォームの袖で隠しながら、消え入りそうな声で呟いた。
「……拓海。それ、本当に消して……、お願い……。」
俺のその言葉は、蓮の胸に別の意味で突き刺さった。
(……春が、あんなに嫌がってる。やっぱり、俺に抱きつかれて寝てたのが、そんなにショックだったんだな……。拓海にそんな風に見られるのが、耐えられないくらい嫌なんだ……)
春の悲しそうな(と勘違いした)表情を見た瞬間、蓮の頭の中で、何かが完全にキレた。
「おい、拓海」
蓮が一歩踏み出し、拓海の胸ぐらを掴む一歩手前の、圧倒的な威圧感で言い放つ。
「その写真、俺に寄こせ」
「え?」
拓海が目を丸くする。
「消さなくていいから、その写真、今すぐ俺のスマホに転送しろ。……その代わり、お前のスマホからは完全に消去しろ。他の誰にも見せるな。陸も凛も、二度と口にするな」
蓮の切れ長の瞳には、ただの照れ隠しではない、本気の、冷徹な『独占欲』がギラギラと宿っていた。
(春のこんな無防備な姿、他の男に一秒だって見せてたまるか。拓海、お前が春の好きな奴だとしても……この写真だけは、絶対に俺がもらう)
「お、おう……分かったよ。そこまでマジになんなって」
蓮の本気すぎるオーラに、流石の仕掛け人の拓海も一瞬気圧され、
苦笑いしながら「ほらよ」とAirDropで蓮のスマホに写真を転送した。
そして、目の前で自分の端末から完全に削除してみせる。
蓮のポケットの中で、マナーモードのスマホが短く震えた。
それを受け取ったのを確認すると、蓮はふいっと俺から目を逸らし、ぶっきらぼうに部室のドアへと歩き出した。
「……先に行くぞ、春」
「あ、うん……」
俺は、自分の心臓がうるさいくらいに跳ね上がっているのを感じていた。
(蓮、あの写真……消させずに、自分でもらうんだ……。なんで? 拓海に自分の寝顔を見られるのが恥ずかしかったから? それとも、俺との写真を……残しておきたかった、なんて……そんなわけ、ないよね……)


