『付き合ってない、たぶん』上

「幼馴染だから普通」

そう口では言ったものの、一度意識してしまった熱は、もう簡単には冷めてくれない。

(……あいつ、普通って言ったときの顔、めちゃくちゃ無理してたな……)

蓮は、グラウンドに散らばるボールを拾い上げながら、春のあの真っ赤な顔を思い出していた。

(本当に普通だと思ってんなら、あんなに耳まで赤くするなよ。……期待しちまうだろ)

そして春も、ビブスを握りしめて、ぎゅっと目を閉じていた。

(蓮のバカ。普通って言ったくせに、なんであんなに、かっこいい顔で照れてるんだよ……)

お互いに、「普通」という嘘でカモフラージュしながら。

二人の距離感は、もう後戻りできないところまで、狂い始めていた。