『付き合ってない、たぶん』上

「なぁ、さっきの蓮の『好きな人』、完全に春のことだよな?」

凛が、確信に満ちた声で呟く。

「100パーそうだろ。『無防備で、ただの友達だと思われてる関係』なんて、春以外にいるわけねぇ」

拓海が、呆れたようにため息をついた。

「なのに、肝心の春のやつ、布団かぶってショック受けてたぞ。絶対に自分じゃないと思ってやがる」

「あいつら、両片想いのくせに、こじらせすぎだろ……」

陸が、くすくすと笑う。

「自分たちが付き合ったからこそ、あいつらのもどかしさが、余計に見ててイライラするわ」

「なぁ、明日からの練習さ。ちょっと俺らで、背中押してやらない?」

凛が、暗闇の中で、悪戯っぽく瞳を輝かせた。

「例えば、あえて二人を引き離して、蓮の独占欲を、もっと爆発させるとかさ」

「それ最高。蓮、普段はクールぶってるけど、春のことになると、マジで余裕なくなるからな」

拓海がニヤリと笑う。

「よし、作戦決定な。明日の朝練から、ちょっと仕掛けてみようぜ」

午前2時の暗闇のなか、友人たちの、お節介な作戦会議が静かに幕を閉じる。

すぐ隣で、お互いを想って切ない夢を見ている二人。

明日から、周りの奴らによる怒涛の『両片想い包囲網』が始まることを、二人はまだ知らない。