『付き合ってない、たぶん』上

そのとき、ガラッと部屋のドアが静かに開いた。

遅れて戻ってきたのは、同じサッカー部の陸と凛だ。

「わりぃ、遅くなった」

「……ちょっと、な」

暗闇のなかでもわかるくらい、二人の雰囲気は、どこかいつもと違ってそわそわしている。

布団に潜り込む陸に、拓海がニヤニヤしながら声をかけた。

「おい陸、凛。お前らどこ行ってたんだよ。ちょうど今、恋バナしてたんだわ」

すると、陸が少し照れくさそうに、だけどはっきりと、とんでもないことを口にした。

「あー、それなんだけどさ。……俺と凛、付き合うことになった」

「「はぁっ!?」」

拓海と、起きていた部員たちの、驚愕のひそひそ声が響く。

布団のなかの俺も、衝撃で跳び起きそうになるのを、必死で堪えていた。

まさか、身近な男友達同士が付き合うなんて。

「マジかよ! お前らガチ!?」

「おう。さっき外で、ちゃんと話してな」

陸の声の後ろで、凛が照れくさそうに、布団を深くかぶる気配がする。

男同士でも、好きになって、付き合う。

そんな現実が、すぐ目の前で起きていた。

静まり返る部屋のなか、拓海が興奮冷めやらぬ声で、再び蓮に矛先を向けた。

「うわー、マジかよ……。じゃあさ、蓮。お前は本当に好きな奴いねぇの?」

陸と凛の報告のせいで、部屋の空気は、さっきより何倍も熱を帯びている。

蓮は、しばらく沈黙していた。

俺は布団のなかで、ぎゅっと目を閉じたまま、じっと耳を澄ませる。

(……まぁ、ここだけの話だけどな)

蓮の、少し低くて、ハスキーな声が聞こえた。

(……実は、いる)