『付き合ってない、たぶん』上

「……なぁ、春のやつ、今日も休みか」

放課後の教室。

夕暮れのオレンジ色の光が差し込む中、陸がぽつりと呟いた。

春の机の上には、誰にも配られることのないプリントが寂しく置かれている。

その隣の席の蓮は、もう何日も、生ける屍のように虚ろな目でただ黒板を見つめていた。

「もう3日連続だぜ? あいつが部活も学校も休むなんて、中等部の頃から数えても一度もねぇよ……」

拓海がいつも通りの軽口を叩く余裕もなく、前髪を乱暴にかきむしる。

「……蓮のあの頑固さは、もう動かせないよ」

凛が静かに窓の外を見つめながら、ため息を漏らした。

「あいつは『春のために悪者になる』って決めて、自分の心も一緒に殺してる。春が学校を休んで一番傷ついて、ボロボロになってるのは、他でもない蓮自身なのにね」

「クソ、あいつらマジでなんなんだよ……。お互いしか見てねぇクセに、なんでこんなことになっちまうんだよ……!」

陸が悔しそうに拳を机に叩きつける。

中等部からのエスカレーター組で、ふたりの距離感バグな幸せを誰よりも願っていた3人。

だけど、蓮の「春の未来を奪いたくない」というあまりにも重すぎるエゴの前に、

包囲網の仕掛け人たちも、ただ見守るしかできなかった。