『付き合ってない、たぶん』上

お互いに「相手は拓海が好き」なんて大勘違いを乗り越えて、

全校生徒の前で公開告白までして、やっと付き合えたはずなのに。

「……なぁ、蓮。今日、部活終わったらジュース買いに行こ」

「わりぃ、春。今日はちょっと、親に頼まれた用事があって、部活終わったらすぐ帰らなきゃいけないんだ」

蓮は申し訳なさそうに俺の頭を撫でたけれど、その目はやっぱり、どこか遠い場所を見つめているような気がした。

「……そっか。分かった」

背中を向けて歩き出す蓮の後ろ姿を見送りながら、俺は自分の胸を強く締め付ける、

最悪の二文字を振り払うことができなかった。

(まさか……浮気、とか……?)

男同士だし、幼馴染だし、付き合えたのは奇跡みたいなものだった。

もし、新学期になって、蓮に新しく「好きな女の子」ができたんだとしたら?

女の子が相手なら、男の俺なんか、最初から勝ち目なんてない。

頭の中に渦巻く暗い想像に、俺は今にも泣き出しそうになっていた。