『付き合ってない、たぶん』上

一方その頃、前方の席で部員と話していた蓮は――。

(……クソ、なんで春の隣、取れなかったんだよ)

蓮は、笑顔で相槌を打ちながら、内心では激しい自己嫌悪に陥っていた。

春がバスに乗ってきた瞬間、本当は「ここ空いてるぞ」って、自分のカバンをどけるつもりだった。

だけど、周りの部員たちの目があった。

「お前ら、バスの席まで一緒かよ」

なんてからかわれるのが、急に怖くなってしまったのだ。

(気にさせて、男同士で付き合ってるとか思われたら、春が困るよな……。だから、これで正解なんだ)

そう自分に言い聞かせるけれど、窓ガラスに映る春の姿を見るたび、胸が締め付けられる。

他の部員と楽しそうに話し始めた春を見て、モヤモヤとした独占欲が、じわじわと湧き上がってくる。

(あいつ、俺が隣にいなくても、平気そうな顔しやがって……。……少しは、寂しがれよ)

バスのエンジンが静かに回りだし、学校の敷地を出発する。

お互いに、全く気にしていないふりをしながら。