拓大広陵vs沖縄尚学。
甲子園の決勝戦から、耳が離せなかった。
八回表、ツーアウト満塁。
一打逆転の拓大広陵。
バッターボックスは、二番キャプテン。
俺はいつものコンビニで、缶コーヒーを片手に電子タバコをふかしながら、耳を澄ませていた。
コンコン。
運転席側の窓の向こうに、芳江さんがいた。
窓を開ける。
『あれ、どうしたの?』
俺が声を掛ける。
『何サボってんだよ』
芳江さんが笑いながら言った。
『うち来なよ。野球だろ?』
俺は頷いた。
すぐに芳江さんを助手席に乗せ、車を走らせた。
『ちょっと待ってな』
芳江さんは駆け足で家に入り、テレビとエアコンをつけてくれた。
待ちきれず、俺もすぐに後を追った。
八回裏。
拓大広陵は同点に追いついたものの、ピンチを迎えていた。
県を代表して頑張っている彼らを、心から応援していた。
『踏ん張れっ……』
その時、
ピコーン。
LINEが鳴った。
美香だ。
『野球観てる?』
『言ってなかったけどね』
『うちの子の母校だよ』
メガホンを持って「頑張れ」と応援する羊のスタンプ。
そりゃー、空っぽになるか……。
なんとなく想像していたものが、少しだけ具体的になった。
ピコーン。
今度は、口元にハートのついた羊。
ピコーン。
『暑いけど、ゆうもお仕事頑張ってね』
俺は、もうハートにブレなかった。
これくらいの距離感でいい。
これくらいが、ちょうどいい。
今は、LINE友達。
たまーに、お互いLINEする。
それが今は、心地よかった。
間違いにしなかったから。
最後まで言えなかった。
『好きです』
でも、それで良かったんだ。
カキーン。
高校野球が、俺を現実へ呼び戻した。
拓大広陵が負けた……。
終わり
甲子園の決勝戦から、耳が離せなかった。
八回表、ツーアウト満塁。
一打逆転の拓大広陵。
バッターボックスは、二番キャプテン。
俺はいつものコンビニで、缶コーヒーを片手に電子タバコをふかしながら、耳を澄ませていた。
コンコン。
運転席側の窓の向こうに、芳江さんがいた。
窓を開ける。
『あれ、どうしたの?』
俺が声を掛ける。
『何サボってんだよ』
芳江さんが笑いながら言った。
『うち来なよ。野球だろ?』
俺は頷いた。
すぐに芳江さんを助手席に乗せ、車を走らせた。
『ちょっと待ってな』
芳江さんは駆け足で家に入り、テレビとエアコンをつけてくれた。
待ちきれず、俺もすぐに後を追った。
八回裏。
拓大広陵は同点に追いついたものの、ピンチを迎えていた。
県を代表して頑張っている彼らを、心から応援していた。
『踏ん張れっ……』
その時、
ピコーン。
LINEが鳴った。
美香だ。
『野球観てる?』
『言ってなかったけどね』
『うちの子の母校だよ』
メガホンを持って「頑張れ」と応援する羊のスタンプ。
そりゃー、空っぽになるか……。
なんとなく想像していたものが、少しだけ具体的になった。
ピコーン。
今度は、口元にハートのついた羊。
ピコーン。
『暑いけど、ゆうもお仕事頑張ってね』
俺は、もうハートにブレなかった。
これくらいの距離感でいい。
これくらいが、ちょうどいい。
今は、LINE友達。
たまーに、お互いLINEする。
それが今は、心地よかった。
間違いにしなかったから。
最後まで言えなかった。
『好きです』
でも、それで良かったんだ。
カキーン。
高校野球が、俺を現実へ呼び戻した。
拓大広陵が負けた……。
終わり



