見積もりには書けないもの

俺もわかってるよ……

俺の方がわかってるよ……

俺の方が、絶対好きになってるから……

頭の中だけで言葉を発した。

でも、すぐには何も言葉にできなかった。

それを感じたからか、森下さんはすぐに、

「ごめんね」

そう言って箸を取った。

「さっ、冷める前に食べよ」

笑顔で俺を見つめてくる。

好きだ……

口には出せなかった。

でも何度も、何度も心の中で叫んだ。

森下さんにここまで言わせておいて、

だんまりかよ……

何がライオンだ。

この、生まれたての子鹿ちゃん……

もう一人の俺が、溢れ出してくる。

「既婚者が人を好きになることが、そんなに悪か?」

「脱線するから悪なんだろ?」

「伝えろよ……それは脱線か?」

「伝えた先に脱線するのがわかるから、自分を止められなくなるのがわかるから、言えないだけだろ?」

「そんなやつなら、最初から好きなんて感情と向き合おうとするなよ」

何なんだ……

ダーク雄一郎。

図星すぎて、何も浮かばなくなっていた。

さっきの涙を必死にかき消すように。

楽しい話になるように。

一生懸命に言葉を繋いでいる。

俺が何て返したらいいのかなんて、考える隙も与えないように。

まるで、俺を無かったことにしてくれようとしている森下さんを見ていると、余計に情けなくなった。

ダーク雄一郎……

ありがとう。

でもさ……

やっぱ俺は、ダサい奴だよ。

自分を止める自信がない。

頭の中ではダーク雄一郎と話をしながら、森下さんと話をしていた。

だから、ほとんど上の空だった。

それでも……

やっぱり、抱きしめたい。

今日だけ……

絶対に、今日だけ。

抱きしめて伝えたいんだ。

ただ愛おしい。

それだけなんだ。

今、伝えなきゃ……

俺、絶対後悔する。

俺は、

「ご馳走様」

と箸を置き、椅子を引いて立ち上がった。