見積もりには書けないもの

目が合った。

数秒。

お互い、目を逸らさない。

すると森下さんは、急にニコっと笑顔に変えた。

「コーヒー淹れるね」

そう言って立ち上がった。

「なんか楽しいね」

キッチンへ向かう森下さんが、背中越しに俺にそう言ってきた。

なんか楽しいね……。

なんか楽しいね……。

その言葉へのアンサーに、躊躇している暇などなかった。

心から言葉を発していた。

「俺もそう思ってた」

きっと前世で友達だったのかなと

少し笑いながらコーヒーを淹れている森下さんが、キッチンから答えた。

「なんか原澤さんって、波長が合うんだよね」

友達か。

そこは突っ込まないようにしよう。

そう思いながら、俺も答えた。

「いや、親友とか幼馴染ぐらいでしょ」

半笑いで返すのが精一杯だった。

二杯目のコーヒーと一緒に、手作りのパウンドケーキを出してくれた。

胃袋を掴まれるって、こういうことか……。

「美味しい……」

また自然と口から出ていた。

もう、鷲掴みにされている感じがした。

リフォームの話もほぼまとまり、見積もりの内容、金額も喜んでくれた。

工事日程も決まった。

今月末の四日間。

予備日を入れて、五日の工程。

二週間ちょっと先だ。

それまで、ここに来るのは契約の時だけか……。

そう思うと、仕事の予定が決まったはずなのに、寂しさの方が勝った。

それでも、契約の日を決めた。

翌々週の月曜日。

午後五時。

お互いなかなか予定が合わず、寂しさが少しずつ増していく。

お盆を挟むため、どうしても予定がバタついてしまう。

しかも、

「間に合うかな……」

そんなタイトな日程を調整していると、森下さんが少し寂しそうな顔で俺を見つめてきた。

その瞬間、涙の羊のスタンプがふと頭をよぎった。

あの時の勘違いとは違う。

今度は――

もう、それは勝手に俺の中で確信に変わっていた。