見積もりには書けないもの

LINE……
めっちゃ気になる。

でも、今は芳江さんとの時間だ。

優先順位は間違えない。

浮かれていたのは確かだが、それよりも、さっきのLINEは既読をつけたものの、まだ返信していない。

ということは、多分、業者さんかな。

返信、早くしたいな……

ここで浮かれ過ぎず、きっちりしなきゃな。

そう思いながらも、芳江さんとの時間なのに、そんなことが頭をよぎってしまう。

そんな俺を見抜いたのか、芳江さんはテレビから俺へ視線を変えて言った。

「忙しそうだね」

そして、ニヤリと笑いながら、

「顔に困ったって書いてあるよ」

と言った。

山崎さんと言い、芳江さんと言い……

女性はテレパシーでもできるのかな。

その言葉に、一瞬怯んでしまった。

「いや、そんなことないですよ。
ただまぁ……考えること多いからかな」

そう濁した。

その後、芳江さんとはたわいもない会話をしながら、いつもの手直し。

そしてエアコンの確認。

一通り終わらせ、事務所へ向かった。

さっ。

見積もりだ。

先程のイメージを数字にすることは容易かった。

もう頭の中に、イメージが出来上がっていたからだ。

家具移動も、器具脱着も俺の仕事。

見積もりには載せなかった。

森下さんへの見積もりに、最大限のサービスを詰め込む。

気がつけば、二時間ほどで完成していた。

午後七時三十分。

「そろそろ帰るか」

そう思い、携帯を手に取った。

その瞬間――

思い出した。

さっきのLINE……

森下さんへの返信……

早く見積もりをやらなきゃ。

そのことばかり考えていた俺は、

すっかり忘れていた。