無音の車内。
電子タバコの煙を吐きながら、何かの感情に引っ張られないようにする俺。
事務所からほど近い、次の現場は常連のおばあちゃん、芳江さんの家だ。
森下さんの家から事務所を挟んだ、その先にある。
多分、30〜40分くらい。
少し早く着いた俺は、たとえ慣れた常連さんのところへ行く時でも、親方の教えを守ることにしていた。
いつものコンビニに寄って、気持ちを落ち着かせるために缶コーヒーを買う。
午後二時四十五分。
一服してから、芳江さんの家に向かおう。
そう思いながら、いつものエメラルドマウンテンを手に取り、レジへ向かった。
どこか気持ちが浮ついていたのか。
それとも、まだ余韻を引きずっていたのか。
いつものレジの山崎さんから、
「こんにちは」
と声をかけられて、ふと我に返った。
「……あ、こんにちは」
山崎さんは、この事務所の近くにコンビニができてからだから、もう10年近い付き合いになる。
多分、今では30代後半くらいになったのかな。
出会った頃は、事務所の後輩たちがよく騒いでいた。
「原澤さんっ。
あのコンビニのレジの子、可愛いっすね〜」
「確かにな」
「なんだろう……トイプードル?」
そう。
トイプードルっぽい感じ。
多分、あのクリっとした目に、ふわっとしたカール。
それがトイプードルを連想させたんだと思う。
山崎さんとは、買い物ついでに話をする仲だった。
それももう10年くらいになる。
店員と客というより、もう仲間って感じだった。
そんな山崎さんからの「こんにちは」に、すぐ答えられなかった俺を、山崎さんは見逃さなかった。
俺の顔をじっと見ながら、少しだけ口元を緩める。
そして――
「原澤さん……なんか浮ついてるよ」
山崎さんが、にやりと怪しむ目で俺に話しかけた。
電子タバコの煙を吐きながら、何かの感情に引っ張られないようにする俺。
事務所からほど近い、次の現場は常連のおばあちゃん、芳江さんの家だ。
森下さんの家から事務所を挟んだ、その先にある。
多分、30〜40分くらい。
少し早く着いた俺は、たとえ慣れた常連さんのところへ行く時でも、親方の教えを守ることにしていた。
いつものコンビニに寄って、気持ちを落ち着かせるために缶コーヒーを買う。
午後二時四十五分。
一服してから、芳江さんの家に向かおう。
そう思いながら、いつものエメラルドマウンテンを手に取り、レジへ向かった。
どこか気持ちが浮ついていたのか。
それとも、まだ余韻を引きずっていたのか。
いつものレジの山崎さんから、
「こんにちは」
と声をかけられて、ふと我に返った。
「……あ、こんにちは」
山崎さんは、この事務所の近くにコンビニができてからだから、もう10年近い付き合いになる。
多分、今では30代後半くらいになったのかな。
出会った頃は、事務所の後輩たちがよく騒いでいた。
「原澤さんっ。
あのコンビニのレジの子、可愛いっすね〜」
「確かにな」
「なんだろう……トイプードル?」
そう。
トイプードルっぽい感じ。
多分、あのクリっとした目に、ふわっとしたカール。
それがトイプードルを連想させたんだと思う。
山崎さんとは、買い物ついでに話をする仲だった。
それももう10年くらいになる。
店員と客というより、もう仲間って感じだった。
そんな山崎さんからの「こんにちは」に、すぐ答えられなかった俺を、山崎さんは見逃さなかった。
俺の顔をじっと見ながら、少しだけ口元を緩める。
そして――
「原澤さん……なんか浮ついてるよ」
山崎さんが、にやりと怪しむ目で俺に話しかけた。



