『美味しそう……』
思わず口に出していた。
それを聞き取った森下さんが、すかさず言った。
『お口に合うかわからないですよ』
少し照れたように笑ってから、
『でも、ありがとうございます。最近はずっと一人で食べてたから……一緒に食べてもらえるだけで嬉しいの』
そう言ってくれた。
さっきまで俺の頭の中にあったモヤモヤも、どこかへ消えていた。
今は、このパスタを気持ちよくいただこう。
その決意表明のように、普段より少し大きな声で、
『いただきます!』
と言っていた気がする。
パスタもサラダも、とても美味しかった。
そして、楽しい時間が過ぎていった。
食事をしながら、いろんな話をした。
考えて話すことなんて、一つもなかった。
知りたい。
聞きたい。
伝えたい。
その感情だけが言葉を発し、耳を傾けていた。
森下さんは、俺より三つ年上だった。
見た目は同世代か、むしろ少し下くらいだと思っていた。
レザークラフトにもかなり興味を示してくれた。
その話をしているうちに、なんだか俺自身もまた、レザークラフトへの気持ちが再燃しそうな予感がした。
息子さんの名前の由来。
旦那さんとの出会い。
今までのこと。
本当にいろんな話をしてくれた。
食後には、森下さんが温かいコーヒーを淹れてくれた。
それを飲みながらも、お互いの話は止まらなかった。
多分、二人ともこの時間を、少しでも長く続けたいと思っていたんだと思う。
やがて、どちらからともなくリフォームの話に戻っていった。
……途中、何度か脱線しながら。
それでも話は一通りまとまり、ふと時計に目が入った。
午後二時前。
楽しい時間って、本当にあっという間だな。
そう感じていた。
実は、午後三時から別の打ち合わせが入っていた。
だから、引き際は潔く俺が決めた。
……いや。
潔くはなかった。
俺が俺自身に言い聞かせた、という方が正しい。
『森下さん、今日はありがとうございました。それに、ご馳走様でした』
挨拶を済ませ、次の約束をした。
『次回は、見積もりお持ちしますね』
森下さんは、深々と何度も丁寧に頭を下げて、お礼を言ってくれた。
帰り際、車まで見送ってくれた森下さんに、窓を開けてもう一度お礼を言いながら車を動かした。
車庫から出る俺に、森下さんがお辞儀をする。
そして、そっと二回、手を振ってくれた。
サイドミラー越しに映る森下さんの口元が、
「またね」
と動いた。
俺はすぐに、朝買って飲んでいた、すっかりぬるくなったコーヒーを一口含んだ。
そして、電子タバコを口にした。
『あー……これ、恋だな』
思わず呟いた。
電子タバコの煙を吐き出しながら、バックミラーを見つめる。
そこには、もう森下さんの姿は見えなかった。
俺は自分に言った。
『昔ならな』
その後、ラジオを消した。
無音になった車内で、電子タバコを咥えながら、次の現場へ向かった。
思わず口に出していた。
それを聞き取った森下さんが、すかさず言った。
『お口に合うかわからないですよ』
少し照れたように笑ってから、
『でも、ありがとうございます。最近はずっと一人で食べてたから……一緒に食べてもらえるだけで嬉しいの』
そう言ってくれた。
さっきまで俺の頭の中にあったモヤモヤも、どこかへ消えていた。
今は、このパスタを気持ちよくいただこう。
その決意表明のように、普段より少し大きな声で、
『いただきます!』
と言っていた気がする。
パスタもサラダも、とても美味しかった。
そして、楽しい時間が過ぎていった。
食事をしながら、いろんな話をした。
考えて話すことなんて、一つもなかった。
知りたい。
聞きたい。
伝えたい。
その感情だけが言葉を発し、耳を傾けていた。
森下さんは、俺より三つ年上だった。
見た目は同世代か、むしろ少し下くらいだと思っていた。
レザークラフトにもかなり興味を示してくれた。
その話をしているうちに、なんだか俺自身もまた、レザークラフトへの気持ちが再燃しそうな予感がした。
息子さんの名前の由来。
旦那さんとの出会い。
今までのこと。
本当にいろんな話をしてくれた。
食後には、森下さんが温かいコーヒーを淹れてくれた。
それを飲みながらも、お互いの話は止まらなかった。
多分、二人ともこの時間を、少しでも長く続けたいと思っていたんだと思う。
やがて、どちらからともなくリフォームの話に戻っていった。
……途中、何度か脱線しながら。
それでも話は一通りまとまり、ふと時計に目が入った。
午後二時前。
楽しい時間って、本当にあっという間だな。
そう感じていた。
実は、午後三時から別の打ち合わせが入っていた。
だから、引き際は潔く俺が決めた。
……いや。
潔くはなかった。
俺が俺自身に言い聞かせた、という方が正しい。
『森下さん、今日はありがとうございました。それに、ご馳走様でした』
挨拶を済ませ、次の約束をした。
『次回は、見積もりお持ちしますね』
森下さんは、深々と何度も丁寧に頭を下げて、お礼を言ってくれた。
帰り際、車まで見送ってくれた森下さんに、窓を開けてもう一度お礼を言いながら車を動かした。
車庫から出る俺に、森下さんがお辞儀をする。
そして、そっと二回、手を振ってくれた。
サイドミラー越しに映る森下さんの口元が、
「またね」
と動いた。
俺はすぐに、朝買って飲んでいた、すっかりぬるくなったコーヒーを一口含んだ。
そして、電子タバコを口にした。
『あー……これ、恋だな』
思わず呟いた。
電子タバコの煙を吐き出しながら、バックミラーを見つめる。
そこには、もう森下さんの姿は見えなかった。
俺は自分に言った。
『昔ならな』
その後、ラジオを消した。
無音になった車内で、電子タバコを咥えながら、次の現場へ向かった。



