ある日の電話。

いつものようにくだらない話をしていたあなたが、急に声のトーンを変えた。

「なあ、聞いてほしいんだけどさ」

「なに?」

少しだけ間があった。

「俺、好きな人できた」

その瞬間。

心臓が、一回だけ大きく鳴った気がした。

「……そっか」

なんとか笑った。

「どんな子?」

聞きたくなかった。

本当は、絶対に聞きたくなかった。

でも、聞いた。

あなたは嬉しそうに、その人の話をした。

どんなところが好きなのか。

どんなところが可愛いのか。

その人と何を話したのか。

聞けば聞くほど、分かってしまった。

あなたが、その人をどれだけ好きなのか。

そして。

私には、勝ち目がないことも。

「へえ……めっちゃ好きじゃん」

「やっぱ分かる?」

電話越しでも分かるくらい、あなたは嬉しそうだった。

私は笑った。

笑いながら、あなたの幸せを願った。

……本当は、泣きそうだった。

あなたが恋に落ちていく。

その横で私は、そっとあなたに恋をしていた。

何も気づかずに笑うあなたの横顔を、私はずっと見ていた。