夏休みの午後。

周りの友達は、海だとか花火だとか、楽しそうな話ばかりしていた。

「明日、みんなで遊びに行くんだ」

そう言って笑う友達に、私は「いいな」と笑い返した。

本当は、私も遊びたかった。

でも、受験生の夏はそんなに甘くない。

机の上には開きっぱなしの参考書。
解きかけの問題集。
何度見ても覚えられない英単語。

スマホを手に取ると、また通知が来ていた。

あなたからだった。

『今、電話できる?』

それだけの短いメッセージなのに、疲れていたはずの心が少しだけ軽くなる。

『できるよ』

送ってから、私は急いで机の上を片付けた。

あなたとは、中学校に入ってから知り合った。

同じ学校じゃない。

たまたま友達を通じて知り合って、それから少しずつ話すようになった。

実際に会った回数は、数えるほどしかない。

だから私たちの距離を縮めたのは、電話とメッセージだった。

顔を合わせるより、声を聞いている時間の方が長かった。

くだらない話をした。

学校の話。

先生の愚痴。

テストの点数。

最近ハマっているもの。

眠くなるまで続く、どうでもいい話。

私は、その時間が好きだった。

あなたの「もしもし」が聞こえるだけで、今日一日の嫌なことがどうでもよくなった。

だから、いつからだったのかは分からない。

気づいたときには、私はあなたのことが好きになっていた。