君の声

 流れる夜の街を見つめながら、樹は車を走らせた。
 自宅に戻り、スーツを脱ぐとスマートフォンが震えた。詩織からだった。
『今日はありがとうございました。またお話しできて嬉しかったです。おやすみなさい』
 樹は思わず口元を緩める。だが、その直後。
『お疲れ様。海外赴任の件、今週中に返事がほしいそうだ』
 中原からのメッセージが画面に表示された。樹の表情から笑みが消える。スマホをベッドの上に放り投げ、そのまま力が抜けるように倒れこんだ。
「……どうしたらいいんだよ」
 樹の言葉は誰もいない部屋に消えていった。