君の声

 樹は考えることをやめ小さく呟いて、詩織の元へ向かう。口元は自然に緩んでいた。
「よかったな」
「はい!」
 詩織は笑って、大事そうに二つのヨーヨーを胸の前で揺らした。その笑顔から、樹はしばらく目が離せなかった。
 一通り楽しんだあと、詩織は夏祭りを手伝った。やってくる子どもたちの相手をし、水族館のスタッフと時折談笑する。樹はその様子をそっと見守った。
 18時を回ったところで夏祭りイベントは終了し、片付けを始めた。
「結局最後まで手伝ってもらったな」
「全然!午後からフリーでしたし、何より楽しかったです」
 その笑顔に樹も笑顔を見せる。
「先輩、あとは俺がやっとくんで上がってください!白石さんも、今日はありがとうございました!」
 広瀬が駆け寄ってきて言った。何か言いたげな顔をして広瀬は樹を見た。
「……なんだよ」
「先輩。せっかくだし、白石さん送っていったらどうすか?」
「は?」「え?」
 樹と詩織が同時に声をあげる。広瀬は意味有りげに笑って片付けに戻って行った。その後ろ姿を二人は黙って見つめる。
「……ったくあいつは」
「広瀬さん、時々急ですよね」
 樹の声に詩織も困ったように笑う。