後期の講義も年内はすべて終わり、学生たちは帰省や旅行の話で盛り上がっていた。
俺は講義を終えた教室でスマホを取り出した。久しぶりに開いた詩織とのトーク画面はあの日で止まったままだ。俺は深呼吸をして文字を打つ。
『もう一度ちゃんと話がしたい。 12月24日の10時、二人で見つけたあの公園で待ってる』
少し迷って送信ボタンを押した。そのまま鞄にスマホをしまいこむ。今は返事を見るつもりはなかった。既読の確認すら今はしない。期待と不安を抱きながら俺は足早に教室を出た。
約束の日。俺は少し早めに家を出て駅に向かう。あれから俺が送ったメッセージに既読はついた。けれど、返事はない。
「返事くらい、くれたっていいだろ」
苦笑いを零したのは昨日のことだ。返事はなくても俺は待つと決めていた。詩織は約束を破るようなやつじゃない。たとえそれが一方的だったとしても。鞄の中には、あの日渡したかったプレゼントもある。
駅から少し歩いた場所にある小さな公園。俺はそのベンチに腰掛けた。近くにある水族館は家族連れで賑わっている。
約束の時間になっても詩織は来なかった。それでも俺は詩織を待った。一時間が過ぎ、二時間が過ぎた。水族館から聞こえていた子供たちの笑い声も、いつしか恋人たちの話声へと変わっていた。明るかった空は夕焼けに染まり、やがて夜の帳が降りる。
何かあったのか、それとも、もう俺の事は——そんな考えを振り払うかのように、俺は詩織を待った。
結局、その日詩織は来なかった。時計の針が待ち合わせから一周した頃、俺は深いため息とともに立ちあがった。
◇
約束の日の朝。
詩織は、何度もメッセージアプリの画面を開いては閉じていた。
『もう一度ちゃんと話がしたい。 12月24日の10時、二人で見つけたあの公園で待ってる』
樹から届いた一通のメッセージ。驚いた。もう二度と届かないと思っていた樹からのメッセージ。胸の奥が熱くなる。嬉しい。それなのにどう返せばいいのか分からなかった。返事は打てなかった。
行くべきなのか、それとも、このまま終わらせるべきなのか。
「……詩織。」
事情を聞き、前日から来ていた綾が、声を掛ける。
「綾、私……」
「メッセージもらってどうだった?」
「……嬉しかった」
「うん。詩織がずっと気にしてたの、知ってるよ」
「離れたくなかった……」
綾は何も言わず、続きを待った。
「だけど、私といても樹くんの負担になるだけだって思って」
「……」
「そばにいないほうがいいって思った」
「それ、本当に樹くんが望んだこと?」
「それは……」
「詩織はどうしたい?樹くんに会いたい?」
綾は詩織の隣に座りこむ。穏やかな笑顔で詩織に問いかける。
「……会いたいよ」
「なら、ちゃんと話しておいで」
「でも……」
「後悔だけはしちゃだめ。まだ好きなんでしょ?」
詩織は少し迷って、静かに頷いた。
「行ってきなよ。自分の気持ちちゃんと伝えたら樹くんも分かってくれるよ」
俺は講義を終えた教室でスマホを取り出した。久しぶりに開いた詩織とのトーク画面はあの日で止まったままだ。俺は深呼吸をして文字を打つ。
『もう一度ちゃんと話がしたい。 12月24日の10時、二人で見つけたあの公園で待ってる』
少し迷って送信ボタンを押した。そのまま鞄にスマホをしまいこむ。今は返事を見るつもりはなかった。既読の確認すら今はしない。期待と不安を抱きながら俺は足早に教室を出た。
約束の日。俺は少し早めに家を出て駅に向かう。あれから俺が送ったメッセージに既読はついた。けれど、返事はない。
「返事くらい、くれたっていいだろ」
苦笑いを零したのは昨日のことだ。返事はなくても俺は待つと決めていた。詩織は約束を破るようなやつじゃない。たとえそれが一方的だったとしても。鞄の中には、あの日渡したかったプレゼントもある。
駅から少し歩いた場所にある小さな公園。俺はそのベンチに腰掛けた。近くにある水族館は家族連れで賑わっている。
約束の時間になっても詩織は来なかった。それでも俺は詩織を待った。一時間が過ぎ、二時間が過ぎた。水族館から聞こえていた子供たちの笑い声も、いつしか恋人たちの話声へと変わっていた。明るかった空は夕焼けに染まり、やがて夜の帳が降りる。
何かあったのか、それとも、もう俺の事は——そんな考えを振り払うかのように、俺は詩織を待った。
結局、その日詩織は来なかった。時計の針が待ち合わせから一周した頃、俺は深いため息とともに立ちあがった。
◇
約束の日の朝。
詩織は、何度もメッセージアプリの画面を開いては閉じていた。
『もう一度ちゃんと話がしたい。 12月24日の10時、二人で見つけたあの公園で待ってる』
樹から届いた一通のメッセージ。驚いた。もう二度と届かないと思っていた樹からのメッセージ。胸の奥が熱くなる。嬉しい。それなのにどう返せばいいのか分からなかった。返事は打てなかった。
行くべきなのか、それとも、このまま終わらせるべきなのか。
「……詩織。」
事情を聞き、前日から来ていた綾が、声を掛ける。
「綾、私……」
「メッセージもらってどうだった?」
「……嬉しかった」
「うん。詩織がずっと気にしてたの、知ってるよ」
「離れたくなかった……」
綾は何も言わず、続きを待った。
「だけど、私といても樹くんの負担になるだけだって思って」
「……」
「そばにいないほうがいいって思った」
「それ、本当に樹くんが望んだこと?」
「それは……」
「詩織はどうしたい?樹くんに会いたい?」
綾は詩織の隣に座りこむ。穏やかな笑顔で詩織に問いかける。
「……会いたいよ」
「なら、ちゃんと話しておいで」
「でも……」
「後悔だけはしちゃだめ。まだ好きなんでしょ?」
詩織は少し迷って、静かに頷いた。
「行ってきなよ。自分の気持ちちゃんと伝えたら樹くんも分かってくれるよ」
