君の声

 詩織が泣いて部屋を出てから一週間が過ぎた。俺はまだ連絡できずにいた。
 あの日、俺はどうしても詩織を追いかけることができなかった。すぐにでも追いかけて、引き止めたかった。だけど、できなかった。詩織の涙が頭に焼き付いて離れない。泣かせたかった訳じゃない。それでも泣かせたのは俺だった。
 詩織が出て行ったあと、連絡するためにとトーク画面を開こうとした。その前に、後輩とのやり取りが目に入る。
 『先輩が助けてくれて、嬉しかったです』
 …………もしかして。
 詩織が見たのは、これだったのか。
 だからあの時、急に様子がおかしくなったのか。
 誤解だと言えば、ちゃんと説明すれば詩織は許してくれるかもしれない。だけどその誤解を生んだのは俺だった。怪我の理由を隠して、心配してくれた詩織を突き放すような言葉まで口にした。あの時、ちゃんと話せていたら。バイト先で何があったのか、一言でも伝えられていたら。
 詩織を、あんな顔で泣かせなかったんじゃないか。
 そう考えて、何度もメッセージを打っては消した。番号を呼び出しても発信が押せず、スマホを伏せる。そんな毎日だった。それでもやってくるサークルとバイトの日々を過ごしながら俺は「落ち着いたら連絡しよう」そう言い訳をした。