君の声

 最悪だ。
「……わたしには言えないこと?」
 詩織がもう一度、小さく繰り返す。揺れる瞳と視線がぶつかった。
「わたしより、その子が大事?」
「は?」
 頭が真っ白になる。
「ごめん、意味が分からない。なんでそうなるんだよ」
 否定したかった。
 ちゃんと説明したかった。
 心配かけたくない。
 不安にさせている。
 でも焦れば焦るほど、言葉だけが強くなっていく。
「…………もういい」
 震える声だった。
「え、ちょっと、詩織?」
「……帰るね」
 立ち上がる詩織を引き止めることもできない。頬を伝う涙だけが見えた。静かに玄関のドアが閉まる。
 泣いていた。詩織が。泣かせてしまった。誰よりも大切だったのに。
 あいつが、あんな声で泣くのを、俺は初めて聞いた。
 渡すはずだったプレゼントを持ったまま俺はその場に立ち尽くしていた。