—— 大丈夫 ——
その自信はいつの間にか「甘え」に変わっていたことに、俺は気付いていなかった。
いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
気づけば5月になろうとしていた。もうすぐ俺は二十歳の誕生日を迎える。
『今日、リクエストある?』
『なんでも。詩織が作ってくれるならそれで十分。』
メッセージアプリにそんなやりとりが並ぶ。俺の誕生日の今日、詩織が祝ってくれる約束をしていた。俺の家で料理を作って待っててくれる。
「佐野、にやけてどうした?」
先輩が資料から顔を上げ、不思議そうにこちらを見る。
「どうせ、彼女でしょ。」
「鈍感男には分かんないよね、佐野くん」
他の先輩たちがわいわいヤジを飛ばす。サークルの部室で次のイベントの確認中だった。笑って受け流し、資料に視線を戻す。
『プレッシャー与えないで』
ふと見えたスマホの通知に口元が緩みそうになるのを必死に隠しながら資料に目を通した。
「夜、みんなで飯いかね?」
打ち合わせが終わり部室を出る頃に、先輩が提案した。
「佐野も来るだろ?」
「すみません、今日はちょっと」
荷物をまとめながら言うとまた不思議そうな顔をされる。
「バイト?」
「も、そうなんですけど、誕生日なんで彼女が家で待っててくれるんです。」
今度ははっきりと、笑顔でそう告げた。言葉にするだけで胸が温かくなる。
「もう、だからあんたは!」
「佐野、こいつはほっといていいから。」
「お幸せにー!」
そんな先輩の声を背に、俺は部室を出た。あと数時間もすれば会える。バイトに向かう俺の足取りは心なしか軽かった。
「お疲れ様です!」
「おう、樹!誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
バイト先で顔を合わせた店長が声を掛けてくれる。
「悪いな。誕生日なのに、シフト入ってもらって」
「大丈夫っす。」
「早めに上がっていいから」
店長の声を背に俺はホールに出る。
「あ、佐野!今日終わったら飯行こうぜ!酒奢る!」
「めっちゃありがたいんですけど、今日は無理っす」
今度は先輩に声を掛けられる。開店準備を進めながら俺は答えた。
「彼女が家で待っててくれてるんですよ」
そう言って笑えば先輩は一瞬目を丸くしたあと、眉をよせた。
「出た、彼女!」
「だよねーお前には居たんだもんな。」
そんなからかいも俺は笑顔で受け流す。俺は久しぶりにゆっくり会える喜びに浮かれていた。
その自信はいつの間にか「甘え」に変わっていたことに、俺は気付いていなかった。
いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
気づけば5月になろうとしていた。もうすぐ俺は二十歳の誕生日を迎える。
『今日、リクエストある?』
『なんでも。詩織が作ってくれるならそれで十分。』
メッセージアプリにそんなやりとりが並ぶ。俺の誕生日の今日、詩織が祝ってくれる約束をしていた。俺の家で料理を作って待っててくれる。
「佐野、にやけてどうした?」
先輩が資料から顔を上げ、不思議そうにこちらを見る。
「どうせ、彼女でしょ。」
「鈍感男には分かんないよね、佐野くん」
他の先輩たちがわいわいヤジを飛ばす。サークルの部室で次のイベントの確認中だった。笑って受け流し、資料に視線を戻す。
『プレッシャー与えないで』
ふと見えたスマホの通知に口元が緩みそうになるのを必死に隠しながら資料に目を通した。
「夜、みんなで飯いかね?」
打ち合わせが終わり部室を出る頃に、先輩が提案した。
「佐野も来るだろ?」
「すみません、今日はちょっと」
荷物をまとめながら言うとまた不思議そうな顔をされる。
「バイト?」
「も、そうなんですけど、誕生日なんで彼女が家で待っててくれるんです。」
今度ははっきりと、笑顔でそう告げた。言葉にするだけで胸が温かくなる。
「もう、だからあんたは!」
「佐野、こいつはほっといていいから。」
「お幸せにー!」
そんな先輩の声を背に、俺は部室を出た。あと数時間もすれば会える。バイトに向かう俺の足取りは心なしか軽かった。
「お疲れ様です!」
「おう、樹!誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
バイト先で顔を合わせた店長が声を掛けてくれる。
「悪いな。誕生日なのに、シフト入ってもらって」
「大丈夫っす。」
「早めに上がっていいから」
店長の声を背に俺はホールに出る。
「あ、佐野!今日終わったら飯行こうぜ!酒奢る!」
「めっちゃありがたいんですけど、今日は無理っす」
今度は先輩に声を掛けられる。開店準備を進めながら俺は答えた。
「彼女が家で待っててくれてるんですよ」
そう言って笑えば先輩は一瞬目を丸くしたあと、眉をよせた。
「出た、彼女!」
「だよねーお前には居たんだもんな。」
そんなからかいも俺は笑顔で受け流す。俺は久しぶりにゆっくり会える喜びに浮かれていた。
