君の声

「え?」
 詩織の目が少し丸くなる。言った後になって急に恥ずかしくなる。
「あ、いや、その……」
 言葉を探す。
「……久しぶりに会えたんだし」
 詩織は何も言わずに俺を見る。
 やべぇ……何言ってんだよ、俺。
「もう少し一緒にいたい……です」
 素直にそう言った。しばらくして詩織が笑う。
「樹くん、明日の朝、早いって言ってなかった?」
「うん」
「……大丈夫なの?」
「大丈夫」
 即答すると詩織が呆れたように笑った。
「絶対大丈夫じゃないやつじゃん」
「大丈夫!なんとかなる!」
「もう……」
 そう言いながらも詩織の表情はなんだか嬉しそうだった。
 その顔を見て勝手に安心する。
 あぁ、やっぱり大丈夫だ。俺たちは何も変わってない。そう思った。
「……じゃあ」
 少し間を置いて、詩織が口を開く。
「今日だけね」
 一瞬、意味を理解するのが遅れた。
「……ほんと?」
「樹くんが言ったんでしょ」
「そうだけど」
 そう言いながら思わず笑ってしまう。
「なに、その顔」
「嬉しい」
「子どもみたい」
「いいじゃん」
 そう言って笑うと詩織もつられて笑った。その笑顔を見るだけで、疲れなんて全部消える気がした。