君の声

 そんな毎日の中で、朝は講義、昼は打ち合わせ、夕方はバスケ、夜はバイト。一日はあっという間に終わっていた。アルバイト先でも、毎日いろいろな人と出会った。
「お兄さん、かっこいいね!」
 居酒屋でのアルバイト中。料理を運んだテーブルで女性客が笑いながら声を掛けてきた。
「ありがとうございます。でも、買いかぶりですよ」
 俺は困ったように笑いながら、料理を並べていく。
「えーかわいいんだけど!」
「彼女いるの?」
「いますよ」
 即答だった。目の前の女性客が盛り上がる。
「えー!残念!」
「ありがとうございます。ご注文はお揃いですか?」
 いつも通りの笑顔で接客を終えると、その場を離れた。
「あんた、今のお兄さん結構タイプだったでしょ」
「イケメンだったよね」
 背中越しに聞こえた声に思わず苦笑する。
 ——また言われた。
 大学に入ってから、こういうことは珍しくなくなっていた。嬉しくないわけではない。けれど俺には詩織がいる。詩織だけが特別だった。だから大学でも、サークルでも、バイト先でも、俺は彼女がいることを隠したことはなかった。