◇
日曜日。
「詩織ー!久しぶりだねっ!」
待ち合わせ場所に響いた明るい声に詩織は顔を上げた。
「綾!」
事故に遭ってから忘れてしまったものはたくさんある。綾のこともその中の一つだった。
最初は写真を見せられても実感がなかった。親友だと言われても、どこか他人みたいに感じていた。それでも綾は、何も変わらなかった。一緒にご飯を食べて、くだらない話をして。思い出せないことを無理に聞こうとはなしなかった。
思い出せないことに苦しくなった日も。不安で泣きそうになった日も。
何も言わずに隣にいてくれた。
「無理に思い出そうとしなくていいよ」
そう言っていつも通り笑ってた。
その時間を重ねるうちに、少しずつだった。
綾の笑い方も、話し方も、一緒に過ごした時間も。
記憶としてではなく、少しずつ懐かしいと思えるようになった。
他愛もない話をしながら料理を口に運ぶ。
仕事のこと、最近のこと。笑っていたはずなのに、ふと頭の中にあの声が浮かぶ。
『詩織』
「……ねぇ、綾」
「ん?」
詩織は手を止めた。
「私が高校の時、誰か好きな人とかいた?」
綾の手が止まる。
「……急にどうしたの?」
笑っている。でも、その目がほんの少しだけ揺れた気がした。
「なんか最近、変なんだ」
詩織は視線を落とした。
「知らない景色が浮かんだり、懐かしい感じがしたりして」
「……」
一瞬だけ綾の表情が固まる。何かを思い出したように視線を落とす。けれど、すぐに顔を上げいつものように笑った。
「優しい人、だったよ」
「え?」
「詩織のこと、すごく大事にしてた人」
その言葉に、胸の奥がまたざわついた。
理由は分からない。
でも、どうしてか少しだけ——その人に会いたいと思った。
日曜日。
「詩織ー!久しぶりだねっ!」
待ち合わせ場所に響いた明るい声に詩織は顔を上げた。
「綾!」
事故に遭ってから忘れてしまったものはたくさんある。綾のこともその中の一つだった。
最初は写真を見せられても実感がなかった。親友だと言われても、どこか他人みたいに感じていた。それでも綾は、何も変わらなかった。一緒にご飯を食べて、くだらない話をして。思い出せないことを無理に聞こうとはなしなかった。
思い出せないことに苦しくなった日も。不安で泣きそうになった日も。
何も言わずに隣にいてくれた。
「無理に思い出そうとしなくていいよ」
そう言っていつも通り笑ってた。
その時間を重ねるうちに、少しずつだった。
綾の笑い方も、話し方も、一緒に過ごした時間も。
記憶としてではなく、少しずつ懐かしいと思えるようになった。
他愛もない話をしながら料理を口に運ぶ。
仕事のこと、最近のこと。笑っていたはずなのに、ふと頭の中にあの声が浮かぶ。
『詩織』
「……ねぇ、綾」
「ん?」
詩織は手を止めた。
「私が高校の時、誰か好きな人とかいた?」
綾の手が止まる。
「……急にどうしたの?」
笑っている。でも、その目がほんの少しだけ揺れた気がした。
「なんか最近、変なんだ」
詩織は視線を落とした。
「知らない景色が浮かんだり、懐かしい感じがしたりして」
「……」
一瞬だけ綾の表情が固まる。何かを思い出したように視線を落とす。けれど、すぐに顔を上げいつものように笑った。
「優しい人、だったよ」
「え?」
「詩織のこと、すごく大事にしてた人」
その言葉に、胸の奥がまたざわついた。
理由は分からない。
でも、どうしてか少しだけ——その人に会いたいと思った。
