「では、今週の進捗の確認ですが……」
月曜朝の定例ミーティング。ホワイトボードの前に立つ樹の進行は、いつも通り淡々と議題を進めていく。メンバーから出る意見にも的確に答えていく。
「佐野さん、先週お話ししていた音響ですが、デモを作ってきました。」
「ちょっと聞かせて。」
詩織がタブレットを操作し、会議室に音が流れ始める。
樹は静かに耳を傾けた。静かな旋律が流れ、数秒後、小さく頷く。
「……うん、いいと思う」
それだけだった。普段と変わらない、簡潔な返答。
けれど隣にいた広瀬は、樹がほんの一瞬だけ詩織へ視線を止めていたことに気付いていた。普段ならデモの構成や改善点までその場で口にするはずなのに、今日は妙に言葉が少ない。
広瀬は少しだけ眉を上げた。
午前中のミーティングが終わり、メンバーたちが会議室を出ていく中、詩織がデモ音源の入ったタブレットを手に樹の元へ歩み寄った。
「佐野さん、先ほどの音響。詳細の仕様をメールで送っておきましょうか」
「うん、そうしてくれると助かる。午後からこっちで再調整してキューシート送るから確認しておいてもらえる?」
「わかりました。では、失礼します」
詩織は軽く頭を下げると会議室を出て行く。樹はその背を見送り、手元の資料を片付けていると広瀬が手伝いながら声をかけてきた。
「先輩、白石さんとなんかありました?」
「……藪から棒になんだよ」
「なんかちょっと二人の雰囲気が違うなって」
「なんもねぇから。余計な詮索しなくていい。」
樹はそう言って広瀬の横を通りすぎ、会議室を後にする。けれど、その足取りがほんの少しだけ早いことに、本人は気づいてなかった。
「えぇ~、絶対なんかあるじゃないですか」
背後から飛んでくる声を無視しながら、樹は小さく舌打ちする。
(……顔に出てたか?)
そんなはずはない。仕事中はいつも通りだった。必要なことを話し、必要な判断をした。それなのに、水族館で笑っていた詩織の横顔が、不意に頭をよぎる。
(……何考えてんだ、俺は)
振り払うように息を吐くと、樹はそのまま自席へ向かった。
月曜朝の定例ミーティング。ホワイトボードの前に立つ樹の進行は、いつも通り淡々と議題を進めていく。メンバーから出る意見にも的確に答えていく。
「佐野さん、先週お話ししていた音響ですが、デモを作ってきました。」
「ちょっと聞かせて。」
詩織がタブレットを操作し、会議室に音が流れ始める。
樹は静かに耳を傾けた。静かな旋律が流れ、数秒後、小さく頷く。
「……うん、いいと思う」
それだけだった。普段と変わらない、簡潔な返答。
けれど隣にいた広瀬は、樹がほんの一瞬だけ詩織へ視線を止めていたことに気付いていた。普段ならデモの構成や改善点までその場で口にするはずなのに、今日は妙に言葉が少ない。
広瀬は少しだけ眉を上げた。
午前中のミーティングが終わり、メンバーたちが会議室を出ていく中、詩織がデモ音源の入ったタブレットを手に樹の元へ歩み寄った。
「佐野さん、先ほどの音響。詳細の仕様をメールで送っておきましょうか」
「うん、そうしてくれると助かる。午後からこっちで再調整してキューシート送るから確認しておいてもらえる?」
「わかりました。では、失礼します」
詩織は軽く頭を下げると会議室を出て行く。樹はその背を見送り、手元の資料を片付けていると広瀬が手伝いながら声をかけてきた。
「先輩、白石さんとなんかありました?」
「……藪から棒になんだよ」
「なんかちょっと二人の雰囲気が違うなって」
「なんもねぇから。余計な詮索しなくていい。」
樹はそう言って広瀬の横を通りすぎ、会議室を後にする。けれど、その足取りがほんの少しだけ早いことに、本人は気づいてなかった。
「えぇ~、絶対なんかあるじゃないですか」
背後から飛んでくる声を無視しながら、樹は小さく舌打ちする。
(……顔に出てたか?)
そんなはずはない。仕事中はいつも通りだった。必要なことを話し、必要な判断をした。それなのに、水族館で笑っていた詩織の横顔が、不意に頭をよぎる。
(……何考えてんだ、俺は)
振り払うように息を吐くと、樹はそのまま自席へ向かった。
