君の声


 二人で始めた生活は驚くほどあっという間に日常になった。
 朝、一緒の布団で目が覚めて、一緒に食事をし、一緒に家を出て同じ場所に帰る。そして一緒の布団で眠る。あの日願った願いは日常になる。休みの日は二人で雑貨屋へ行き、少しずつ足りないものを揃えていく。増えていくお揃いの食器に樹は少しだけ擽ったさを感じていた。
「このソファかわいい」
 二人は家具屋に買い出しに来ていた。少しはしゃぐ詩織の手を樹はくいっと引いた。
「あるじゃん。」
「見るだけ」
「見たら欲しくなるじゃん」
「そんなことないよ」
「……絶対欲しいって言うなよ」
 樹が少し呆れたように言って二人はソファを眺める。いくつかのソファを見たあと詩織が呟いた。
「やっぱり今のでいいや」
「……なんで?」
 思わず詩織を見れば、嬉しそうに笑って言った。
「樹が使ってたものだから。」
「……やっぱ敵わないな」
 困ったように言いながら、樹は優しい眼差しで詩織を見つめていた。