午後の報告と引き継ぎを終えた樹は会社を出る。
「明日からはまたばりばり俺の下で働いてもらうからな」
そんな言葉と共に、中原から早めの帰宅の許可が出た。
『早く終わった。迎え行く』
それだけ詩織に送る。まだ定時前だから既読はつかない。それでも樹は車を走らせた。詩織の会社の近くで車を止め、詩織が終わるのを待つ。
『今から出るね』
しばらく待っているとメッセージが届いた。樹は車を降りて自動ドアの近くで待つことにした。
一秒でも早く会いたかった。
ガラス越しに、同僚たちと一緒にエスカレーターを降りてくる詩織が見えた。樹に気づいた詩織が手を振った。ガラス越しだから声までは聞こえない。それでも一緒にいる同僚たちがはしゃいでいるのは分かった。
「お待たせ」
「お疲れ様」
駆け寄ってはにかむ詩織の頭を樹は思わず、ぽんと撫でた。少し後ろから小さな歓声があがった。樹は一瞬だけ振り返る。
「ごめん、やめたほうが良かった?」
「ううん、ちょっと恥ずかしいけど、それよりも嬉しい」
詩織は照れながら答えた。樹は自然と詩織の手を取る。
「そっか。……行こうか」
「うん」
樹は詩織の同僚たちに軽くお辞儀をして、詩織の手を引いた。詩織も彼女たちを振り返って軽く手を振る。
車に乗り込んだ二人はお互い顔を見合わせる。
「何言われてたの?」
「……かっこいいねって」
「なんて返したの?」
「でしょって」
笑う詩織に樹は固まる。
(ほんと、そういうとこだよ)
今すぐ触れたくなるのをグッと堪えて樹は車を発進させた。
「そう言えば、お昼の写真。広瀬くんだったね」
「ん?あぁ。一緒に飯食いに行ったんだよ」
「寂しがってたんじゃない?」
「どうだろうな。帰ってきた瞬間、飛びついてきた」
「なにそれ。かわいい」
くすくす詩織が笑う。広瀬の話を楽しそうに聞いてくれるのは嬉しかった。それでも樹は少しだけ気に入らなかった。
車は信号待ちで止まる。
「……広瀬の話はいいだろ」
「樹?」
「いくら広瀬でも詩織の口から他の男の話、聞きたくない。」
窓の外を見ながら呟く。詩織は驚いたように目をぱちくりとさせて、嬉しそうにはにかんだ。
「嫉妬?」
「……悪いかよ」
くすくす笑う詩織を樹は窓越しに見つめる。
「嬉しいなぁ」
前を見てぽつりと言葉を零した時、信号が青に変わる。ギアに置かれた手を詩織がそっと握った。
「……危ないんだけど」
「離そうか?」
「……別に」
言葉とは反対に握られた手に力が入る。
「今日は、家に来ない?」
少し走って樹が言った。
「まだ片付けも終わってないからちょっと散らかってるけど」
「いいの?」
「まだ一回も帰ってないからさ。一緒に帰れたらなって」
樹の言葉に詩織は嬉しそうに頷いた。夕飯を済ませて一度詩織の家に寄ってから樹の家へ向かう。
「やっべぇ、久しぶりだ」
「ふふ」
少し緊張したような樹の横顔に、詩織は思わず笑みを零した。
鍵を開けると、静かな部屋が二人を迎える。玄関にはいくつもの段ボールが積まれていた。アメリカから送った荷物を両親が受けとってくれていたのだ。
「一緒に片付けてもいい?」
「いいの?」
「樹が嫌じゃないなら、手伝わせて」
二人で一緒に片付けを始める。
「これはクローゼット?」
「うん。そのまま掛けていい。」
「了解。」
詩織は丁寧にワイシャツをハンガーへ掛けていく。樹は段ボールから本や書類を取り出し、棚へ戻していく。
「なんか、不思議だな。」
「どうしたの?」
「詩織が俺の家にいる」
「いるね」
「なんかいいな、こういうの」
樹が笑えば詩織もつられて笑顔になる。
二人でした片付けは思っていたより早く終わった。
「明日からはまたばりばり俺の下で働いてもらうからな」
そんな言葉と共に、中原から早めの帰宅の許可が出た。
『早く終わった。迎え行く』
それだけ詩織に送る。まだ定時前だから既読はつかない。それでも樹は車を走らせた。詩織の会社の近くで車を止め、詩織が終わるのを待つ。
『今から出るね』
しばらく待っているとメッセージが届いた。樹は車を降りて自動ドアの近くで待つことにした。
一秒でも早く会いたかった。
ガラス越しに、同僚たちと一緒にエスカレーターを降りてくる詩織が見えた。樹に気づいた詩織が手を振った。ガラス越しだから声までは聞こえない。それでも一緒にいる同僚たちがはしゃいでいるのは分かった。
「お待たせ」
「お疲れ様」
駆け寄ってはにかむ詩織の頭を樹は思わず、ぽんと撫でた。少し後ろから小さな歓声があがった。樹は一瞬だけ振り返る。
「ごめん、やめたほうが良かった?」
「ううん、ちょっと恥ずかしいけど、それよりも嬉しい」
詩織は照れながら答えた。樹は自然と詩織の手を取る。
「そっか。……行こうか」
「うん」
樹は詩織の同僚たちに軽くお辞儀をして、詩織の手を引いた。詩織も彼女たちを振り返って軽く手を振る。
車に乗り込んだ二人はお互い顔を見合わせる。
「何言われてたの?」
「……かっこいいねって」
「なんて返したの?」
「でしょって」
笑う詩織に樹は固まる。
(ほんと、そういうとこだよ)
今すぐ触れたくなるのをグッと堪えて樹は車を発進させた。
「そう言えば、お昼の写真。広瀬くんだったね」
「ん?あぁ。一緒に飯食いに行ったんだよ」
「寂しがってたんじゃない?」
「どうだろうな。帰ってきた瞬間、飛びついてきた」
「なにそれ。かわいい」
くすくす詩織が笑う。広瀬の話を楽しそうに聞いてくれるのは嬉しかった。それでも樹は少しだけ気に入らなかった。
車は信号待ちで止まる。
「……広瀬の話はいいだろ」
「樹?」
「いくら広瀬でも詩織の口から他の男の話、聞きたくない。」
窓の外を見ながら呟く。詩織は驚いたように目をぱちくりとさせて、嬉しそうにはにかんだ。
「嫉妬?」
「……悪いかよ」
くすくす笑う詩織を樹は窓越しに見つめる。
「嬉しいなぁ」
前を見てぽつりと言葉を零した時、信号が青に変わる。ギアに置かれた手を詩織がそっと握った。
「……危ないんだけど」
「離そうか?」
「……別に」
言葉とは反対に握られた手に力が入る。
「今日は、家に来ない?」
少し走って樹が言った。
「まだ片付けも終わってないからちょっと散らかってるけど」
「いいの?」
「まだ一回も帰ってないからさ。一緒に帰れたらなって」
樹の言葉に詩織は嬉しそうに頷いた。夕飯を済ませて一度詩織の家に寄ってから樹の家へ向かう。
「やっべぇ、久しぶりだ」
「ふふ」
少し緊張したような樹の横顔に、詩織は思わず笑みを零した。
鍵を開けると、静かな部屋が二人を迎える。玄関にはいくつもの段ボールが積まれていた。アメリカから送った荷物を両親が受けとってくれていたのだ。
「一緒に片付けてもいい?」
「いいの?」
「樹が嫌じゃないなら、手伝わせて」
二人で一緒に片付けを始める。
「これはクローゼット?」
「うん。そのまま掛けていい。」
「了解。」
詩織は丁寧にワイシャツをハンガーへ掛けていく。樹は段ボールから本や書類を取り出し、棚へ戻していく。
「なんか、不思議だな。」
「どうしたの?」
「詩織が俺の家にいる」
「いるね」
「なんかいいな、こういうの」
樹が笑えば詩織もつられて笑顔になる。
二人でした片付けは思っていたより早く終わった。
